【連帯アピール】山形「豊かな海づくり大会」反対現地闘争

山形「豊かな海づくり大会」反対現地闘争に参加されている皆さん

この間、首都圏において反天皇制運動に取り組んできた、「『 聖断神話』と『原爆神話』を撃つ8.15 反『靖国』行動」より、本日の現地闘争を準備し、また現地に結集されている皆さんに、連帯のアピールを送ります。

私たちは、天皇制の「三大行事」といわれる「国体・植樹祭・海づくり大会」が、日本各地において行なわれてきた、天皇を戴く儀礼を通じて民衆統合をすすめる装置であり、その地域において、天皇警備という名の人権弾圧をともなう、官民一体の天皇翼賛体制をつくりだすものであるとして、反天皇制運動の大きな課題として位置づけています。

本来であれば、実行委メンバーの多くがこの場に結集していなければならないところ、日程的な諸事情で不十分な取り組みになってしまったことをお許し下さい。

私たちは、8・15に向けた前段集会のひとつとして、7月18日に「天皇行事の『海づくり大会』はいらない! 海づくりは、海こわし」と題して、現地闘争を準備されている方を講師にお招きし、討論集会を持ちました。そこでは、近代天皇制国家による東北支配の歴史と、政府・資本によって現地漁業が破壊されていく実態が明らかにされました。また、今回の「海づくり大会」が福島原発事故の翌年に開催を決定したものであり、それは2016年岩手国体、2018年福島植樹祭とつづく、東北における天皇行事のさきがけであること。そこで強調される「東北地方の復興再生」なるものが、現在進行形である福島原発事故や、汚染水の海洋放出という現実を隠ぺいし、原発再稼働政策を後押しするものに他ならないことを確認しました。

私たちは7月30日にも前段集会を持ち、さらに8・15の反「靖国」デモにも取り組みました。

それは、天皇明仁の「生前退位」の意向なるものがNHKにリークされ、そして天皇みずからの、「ビデオメッセージ」のテレビ報道という時期に重なりました。これらの天皇の行為は、「皇室典範」の改正を自らの意志で迫るという、象徴天皇制にとっての明確な違憲行為であり、さらに天皇制の「未来像」を、天皇主導によって確定していこうとする意思を示したものに他なりません。日本の国家社会を、戦争をする体制へと全面的に再編していく時代にあって、象徴天皇制がその存在意義である「国民統合」の機能を、より積極的なものとして高度化させていくという意味において、それは、天皇自身の手による、天皇制再編攻撃の開始であったといわざるをえません。

私たちの8・15行動が、首都圏においては、こうした天皇制攻撃に対する最初の街頭デモであったとすれば、今回の山形現地の闘いは、天皇行事そのものに対して、天皇に対して直接抗議の声を上げていく最初の闘いであると思います。

反天皇制運動の更なる展開をめざし、ともに闘っていきましょう。

2016年9月10日
「 聖断神話」と「原爆神話」を撃つ8.15 反「靖国」行動

【学習会報告】横田耕一・江橋崇編 『象徴天皇制の構造:憲法学者による解読』 (日本評論社、一九九〇年)

天皇重体報道から、天皇Xデー(代替り)政治状況はスタートする。昭和天皇のパターンの強烈な体験から、私たちは、なんとなくそう思いこんでいた。しかし、それは今回、重体などではない天皇自身の「意向」をテコに始まるという、まったく予想もしないスタイルでやってきた。この突発的状況の中で、今、何が起きているのかを正確かつ批判的に認識するために、ストレートに役に立つ本を読みなおそう、そういう位置づけで、『象徴天皇制の構造─憲法学者による解読』(日本評論社・一九九〇年)が、今回のテキストとされた。

横田耕一と江橋崇の二人の編者は、「あとがき」で、こう書いている。

「本書の企画は、昭和天皇の『ご容体』が悪化した一九八八年の秋に始まる。世は恐ろしいほどの『自粛』フィーバーに襲われて、一部の人が抵抗しているものの、抗議の声は小さかった。天皇制を思想的、文化的、歴史的に批判し、糾弾する試みの出版物はいくつかあった。だが、天皇制の法制度論となると、まるで発表されないし、また、その見込みもないというのが当時の状況であった。/これでよいのだろうか。象徴天皇制は、日本国憲法の原則をなす国民主権原理などにどのように拘束されているのか。そもそも象徴天皇制を成り立たしめている法制度はどのようなものなのか。天皇制についての思想は各人によって異なるとしても、誰もが共通して理解しておくべき問題点はどこにあるのか。天皇制に関して戦後の憲法学が積み上げてきたものは何か。これらの点は、まさに緊急に解明されて、代替りという大きな節目で活用されなければならない……」。

この昭和の「代替り」状況で九人の法学者によってまとめられたテキストは「国民主権原理」による象徴天皇制の強い〈拘束〉の原則をキチンと再解読する法制度論であり、「象徴行為論」「公的行為論」そのものへの批判がシャープに展開されている。

天皇・政府・マスコミが一体化して、戦後の憲法学が積み上げてきたものを、まるごと破壊しつくしている、今の状況に対して、「ブルジョワ憲法(象徴天皇憲法)ナンセンス!」という不毛な超越的立場からではない、どういう天皇制批判の声(具体的論理)を私たちが運動的に対置すべきなのか。この切実な大問題を共に考える素材としては、すこぶる有益なテキストであった。次回は、九月二〇日、岩波新書の『昭和の終焉』

(天野恵一)

【集会報告】8・15反「靖国」デモ  

今年もやってきた8・15。例年どおり、反天連も参加する8・15反「靖国」行動の実行委は、7・30集会と8・15デモを準備し、広く参加を呼びかけていった(7・30集会については前号参照)。気持が落ち込む参院選の結果と、天皇メッセージの後のデモである。街頭では一体どういう状況になるのか、正直なところ不安を抱えながら当日を迎えた。デモ出発前の集合会場は韓国YMCA。二つの会議室を一つにして使わせてもらった。

しかし、デモ参加者は次々に会場に集まってきた。会場の椅子には座りきれず床に座り込む人が大半という状況で、暑い廊下にも人があふれた。八月のこの行動は、本当に集まる人一人ひとりの力の結集で成立していることを実感するのだが、これで今年もデモができると胸をなで下ろした。

デモ出発の前に、簡単なアピール交換会を持った。司会は、八月八日の天皇による事実上の「生前退位」表明としてあったビデオメッセージについて、その違憲性を批判しつつ、それによって事実上の代替わりXデーが始まると指摘。そして、この8・15行動が、新しい形で始まったXデー状況下での、われわれが取り組む初めてのデモであり、最後までやり遂げたい、と発言。会場はやや緊張につつまれた(か?)。

その後、以下の団体からそれぞれの取組について簡単な報告と呼びかけを受けた。お・こ・と・わ・り東京オリンピックの実行委員会から8・21集会について、今年の防災訓練の問題と監視行動への参加呼びかけ、福島原発事故緊急会議、反「海づくり大会」行動への呼びかけ、「機動隊は高江に行くな」の七月から八月連続して行動を行った府中の仲間から、辺野古の闘いを全国へと呼びかける辺野古リレー、辺野古基地建設で実際に工事を請けおっている企業への抗議行動を継続しているStop!辺野古埋め立てキャンペーン、自衛隊観閲式反対行動を取り組む仲間から、そして日韓民衆連隊全国ネットワーク、と実に充実したアピール交換会となった。

二八〇人が参加した今年のデモは、強奪されたプラカードの数は例年より少なく、横断幕も最後まで無事であったし、車の被害もなかったが、相変わらずペットボトルは飛んできたし、参加者が用意した旗が壊され、歩道側で横断幕を持っていた人は、右翼によってその横断幕を引っ張られて指を骨折するなど、ひどい状況であったことに間違いない(詳細は一〇月発行予定の、実行委報告集参照)。

参加したみなさま、お疲れさまでした。賛同してくれたみなさま、ありがとうございました。これから本格的に始まる代替わりXデー。ともに考え、行動をつくり出しましょう!

(大子)

【集会報告】「慰安婦」被害者が切り開いた地平―旧ユーゴの活動家を招いて

八月一四日を国連の「『慰安婦』メモリアルデー」に、という趣旨で毎年この日に行われている集会。今年の東京集会は、戦時性暴力問題連絡協議会と日本軍「慰安婦」問題解決全国行動の共催で、「『慰安婦』被害者が切り開いた地平」―旧ユーゴの活動家を招いて」として、日本教育会館で開催された。

まず、青山学院大学教員で、国際人権法を専門とする申惠丰(シン・ヘボン)さんが、「重大な人権侵害の被害回復とは―日韓『合意』はなぜ真の解決にならないのか」と題して報告した。昨年一二月のいわゆる「日韓合意」についてふれつつ、「軍の関与の下に」ではなく、「軍が設置し、運用した制度であった」とされなければならない。被害女性は性奴隷状態に置かれていたのであり、重大な人権侵害の事実を語り継いでいくことが、被害者の名誉を回復し再発防止のための道であると強調した。

続いて、ラダ・ボリッチさんが、「旧ユーゴスラビア女性法廷―正義と平和構築のフェミニスト・モデル」と題して報告。クロアチア出身の彼女は、内戦中、現地で女性戦争被害者救援センターを組織したフェミニスト活動家・研究者である。

ボリッチさんは二〇一五年の、サラエボで行われた民衆法廷について報告した。法廷は犯罪と加害者を名指し、「被害者たちの癒しの場」となったという。内戦終了後も女たちへのさまざまな暴力が続いている、「家父長制、男性優位主義、軍事主義からの解放」をめざそうと呼びかけた。

討論の中では、旧ユーゴでも女性への性暴力が、対立する民族への敵愾心を煽るために利用された事実があり、それは女性への暴力が、国家や民族の枠においてとらえられるからである、「慰安婦はどこの国でもやったこと」という論で性暴力を相対化する議論もあるが、女性への暴力の問題は、普遍的な人権侵害の問題として捉えられなければならない、などの議論があった。

なお、集会後にデモも行われたが、懸念された右翼による妨害は、今年はほとんどなかった。

(北野誉)

【今月のAlert 】開始された天皇制国家の法再編プロセス:私たちの民主主義を今こそ突き出そう

今回の八月一五日の行動には、常とは異なった緊張感がありました。直前に発表された「天皇メッセージ」をもって、明仁天皇制のXデーへのカウントダウンが開始され、第X期の私たちの活動における主要課題が、はっきり、私たちにとってだけのものではないという状況になったからでもあります。

しかしもちろん、その状況は、より困難なものとしてあります。リオではオリンピックへの批判が世論の半数といわれるまでに高まり、ファヴェーラなどの貧困問題もクローズアップされながら、世界中の資本とメディアはこの事実を、オリンピックが開催されるやいなや一斉に黙殺しました。今月に開催されるパラリンピックは、新自由主義のもと福祉政策がそもそもまったく端緒につかない状況のブラジルでは、予算も規模も報道も、よりアンバランスな「先進国だけの祭典」となることが明らかです。

こうした「国家イベント」も含めて始まったばかりの「Xデー」状況ですが、ここでは、いつまでたっても「途半ば」としてその実態を糊塗するしかない安倍の経済政策に代わって、「アベノテイコク」主義ともいえるような状況が、今後、はっきりと起動していくことになるでしょう。靖国をめぐる「日の丸右翼」の暴力はもちろんひどいものでしたが、オリンピック報道の「国威発揚」の絶叫を見せられていて、むしろこちらのほうへの恐怖を感じさせられました。

明仁は、今回のメッセージで「在位三〇年」をもって区切りとしたいという意向を明らかにしています。まだもちろん想定の段階にすぎませんが、この秋から、天皇制をめぐる法律の改定が検討されることだけははっきりしています。それが顕在的に憲法をめぐるものとなる可能性があることはもちろんですが、そうでなかったとしても、その内実は、現実の天皇制の実態を追認するかたちで、憲法解釈や法体制を全面的に俎上とするものとならざるを得ません。しかもその法や法体制の改定は、国会における「全会一致」ばかりでなく、メディアや世論レベルにおいても「一致」することを、実質的な目的として進められることになるでしょう。「天皇あやふし ただこの一語が 私の一切を決定した」(高村光太郎)にも似た幻惑が、すでに言論状況、さらには対抗的運動の内部をも徐々に支配しつつあるのです。

八月八日以後の状況は、これを示唆しています。「陛下のおことば」が、それ自体は法的な根拠を持たないにもかかわらず、これほどまでに威力を発揮することは、私たちが依拠している「戦後民主主義」の脆弱な実態でもありますし、これに対して、私たちがほんとうの意味でその内実を構築していくことへの深刻な必然性をも問いかけるものです。明仁が示したスケジュールに基づいて、今後の政治情勢は展開するでしょう。この秋から来年にかけて天皇制関連の法体制が整備されようとし、それを前提に「在位三〇年」式典が組織される。そして、徳仁の即位儀礼が実施され、新たな天皇制の発足をもって「東京オリンピック」が開催される、というのが、この日本国家に想定される「ハレ」のスケジュールです。

そして、この天皇制と「アベノテイコク」主義は、もちろんそれだけではない。新内閣のもと、「テロ対策」を名目に、とりわけ稲田朋美防衛大臣らにより、政治全体が軍事傾斜をより強めています。沖縄の米軍基地建設も、反原発テントの強制撤去も、大分での監視カメラも、警察権力がより暴力的に行使され、それがさまざまな反対勢力を圧殺していることを明確にしています。こうした軍事・警察国家に向けた官産学の一体化もまた、悪辣さを強めています。

私たちはこの状況に対して微力な存在です。しかし、今回の八月の行動においても、昨年を超える人々とともに、明確な主張を掲げて闘うことができています。これを、どのようにしてもっと広範なものとしていくことができるか、天皇制の代替わりと安倍国家の軍事体制に抗する闘いを、この秋以降、より深い質をもって開始していきたいと考えています。

(蝙蝠)

【月刊ニュース】反天皇制運動Alert 3号(2016年9月 通巻385号)

今月のAlert ◉開始された天皇制国家の法再編プロセス:私たちの民主主義を今こそ突き出そう(蝙蝠)
反天ジャーナル ◉ 井上森、竹森真紀、退位よりも廃止よね
状況批評 ◉ 「これは天皇によるクーデター」─反天皇制へのチャンスになる!?(中嶋啓明)
書評◉坂上康博著『昭和天皇とスポーツ 〈主体〉の近代史』(宮崎俊郎)
ネットワーク ◉ プレセンテ! プレセンテ! プレセンテ!(池内文平)
太田昌国のみたび夢は夜ひらく〈76〉  ◉ もうひとつの「9・11」が問うこと(太田昌国)
マスコミじかけの天皇制〈02〉 ◉ 安倍政権(宮内庁官僚)・天皇・マスコミ一体化した立憲主義破壊を許すな!:〈壊憲天皇明仁〉その1(天野恵一)
【反天連からのよびかけ】02 ◉ 違憲の『天皇メッセージ』が民主主義を押しつぶす
野次馬日誌
集会の真相 ◉8・13 平和の灯を!ヤスクニの闇へキャンドル行動「戦争法の時代と東アジア」/8・14「慰安婦」被害者が切り開いた地平―旧ユーゴの活動家を招いて8・15 反「靖国」デモ/8・21 お・こ・と・わ・り東京オリンピック
学習会報告 ◉ 横田耕一・江橋崇編『象徴天皇制の構造─憲法学者による解読』(日本評論社、一九九〇年)
反天日誌
集会情報

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*2016年9月6日発行/B5判18ページ/一部250円
*模索舎(東京・新宿)でも購入できます。

http://www.mosakusha.com/voice_of_the_staff/