【集会報告】反天連12・23集会「生前退位!? 」なにやっテンノー

天皇制の戦争・戦後責任を問う、反天連の恒例の討論集会。千駄ヶ谷区民会館にて約九〇名が参加した。天皇「代替わり」に向かうこの間の言論状況において、安倍の「戦争政策」と天皇の「平和主義」を対立させ、後者に期待するという言説が「リベラル」の中から大量に生み出されている。そんな中、天皇の「平和主義」の欺瞞を批判することの重要性を確認しつつも、それだけでは不十分ではないかという問題意識から、集会はつくられた。発題者は、反天連の北野誉さん、桜井大子さん、天野恵一さん、そして批評家の平井玄さんの四人。

まず、北野さんは、オーウェルがディストピアを描いた『一九八四年』の「二重思考」や「新語法」が、実は最近の言論状況にとても当てはまるのではないか。
「二重思考」を強いる装置として天皇制が機能しており、それへの批判は、天皇の「平和主義」の内在的な批判としてなされるべき、と提起した。桜井さんは、「良い治世者」像を求める民衆意識や欲望が、今の天皇に投影されているのではないか。憲法逸脱の度合いは大きくなるばかりでありながら、それを飲み込んでしまう象徴天皇制が持つ曖昧さがつくり出す強さを再認識すべきではないか、と語った。天野さんは、天皇が「退位」しても人間になるわけでなく、特権的地位は変わらない事実から、天皇は戦後もずっと現人神と人間の二つの観念を生きていることの欺瞞と偽善をこそ問題にすべき、と論じた。平井さんは、安倍の経済政策は行きづまり、「国家破たん」が先送りされている中、「曖昧な貧乏」として貧困化が進んでいることの現実を凝視する必要がある。資本主義の変容と収縮過程に天皇制がどう適応していくのか見定めつつも、貧困や非正規問題の中から闘いの豊かな可能性があるのではないか、と提起した。

その後の討論では、象徴天皇制自体が民主主義もリベラリズムも何でも入れることができる「国体論」のような使われ方をしているが、その使う側の問題や、天皇・皇后の方が貧困問題には自覚的で、逆に当事者たちが曖昧な気分のまま無自覚であることの問題などが指摘された。

(川合)

【集会報告】アキヒト退位とナルヒト即位を考える練馬集会

アキヒト退位・ナルヒト即位問題を考える練馬の会」の集会が、一二月二二日、千本秀樹さんを講師として開催された。

千本さんは「象徴天皇制、何が問題か」と題して問題提起。明仁天皇は、一六年夏のビデオメッセージにおいて、「国民」の情動に直接に働きかけることで、自身の退位と時代の天皇の即位に向けた流れを、憲法や皇室典範の枠組みを踏み越えてつくりだした。こうした行為が可能だったのは、「象徴天皇制」として再構築された天皇の権威・権力が、あらためて価値づけされ、行使されてきたことにある。そしてそれは、天皇の「護憲」発言や、死者の「慰霊」「追悼」をかつての戦場や大災害の被災地をめぐって行い、その姿を報道させることによって、より強固なものとされてきた。いまやそれは「最強の象徴天皇制」とも言いうるほどで、虚言と強権の政治を次々に繰り出す安倍政権よりも強い「統合力」を発揮し、政権批判の立場をとる人々の「支持」すらもとりつける。しかし、重視せねばならないのは、天皇制の「統合力」がまさに政権を補完することによってこそ拡大しているということだ。

「代替わり」の国家イベントに「国民」意識が組み込まれていきながら、政治システムも軍隊・警察も、所有も、社会の中での人間の関係、差別構造も、指一本触れられることなく残され、国家権力が恣意的に行使されていく。この国家的なイベントの中で、あらためて自らの人権を確立させ、対抗していくことがほんとうに大切なことであるということが、講演では、さまざまな方向から論じられた。なお、この日の講演の資料として配布されたのは、「現代の理論」http:// gendainoriron.jp/ 第10 号(一六年一一月)と第11 号(一七年二月)所収の千本さんの論文なので、内容については参照を。参加者は三〇数名。

前号の「ネットワーク」欄で池田五律さんが紹介してくれたように、今後、この会は「準備会」としてではなく、正式に発足する。ともに進んでいこう。

(蝙蝠)

【今月のAlert】近代天皇制の歴史の内実を批判し「紀元節」を撃つ闘いを組み立てよう

二〇一五年一二月の日韓政府による「慰安婦問題」「合意」が、とうてい歴史問題の「不可逆・最終的」な決着ではありえないということは、その時点から多くの批判とともに語られてきた。そしてそれにもかかわらず、安倍政権の意をくむ右派勢力は、この「合意」をまさに「錦の御旗」と掲げながら差別排外主義の轟音をかき立ててきた。しかし、それから二年を経てこの検証結果が韓国側から発表され、非公開とされてきた秘密合意が存在しており、それが当事者の尊厳を踏みにじるもので、とうてい歴史問題の「決着」とは言い得ないものであるということが明るみに引き出された。

これにより、大日本帝国から戦後の日本国家を通じて、植民地責任、侵略戦争責任が、いまなお未決のままであることがあらためて直視させられたのだ。嘘につつまれた「合意」をいくら形式的に保持しようとしても、この歴史問題は、国家の心臓に深く刺さったものであり、この問題をめぐる言説や国家間の交渉の実態は、双方の国家とりわけ日本国家の腐敗状況をそのまま示すものとしてあるのだ。天皇がどれほど「慰霊」を重ね、「おことば」をどれほど繰り出しても、それが空疎なものでしかないということが、このような事実が示されるたびに露呈されていく。

この二〇一八年を、政府は「明治一五〇年」として祝うのだという。頻発する政治テロと内戦を経て、天皇の神権を核とする天皇制明治政府が成立した。欧米の帝国主義を制度としてまといながら、近隣の民族への侵略を重ねることで国内の近代化をすすめ、東アジアから世界へと軍事力で影響力を高めていった。侵略戦争の深化とともに天皇の大権が神格化されて臣民の精神を統合する存在となっていき、天皇の勅語や図像が国家における最重要なものとして強要された。内戦の死者を祀ることにはじまった靖国神社は、侵略戦争の死者を祀るまさに「戦争神社」となることで完成した。「明治一五〇年」を祝うということは、これらの事実を現在の国際環境や社会状況の中で、「正」のものとして位置づけることであり、歴史修正主義にさらなる上塗りを重ねることである。

この事態のなかで、憲法改悪の具体化が安倍政権から堂々と打ち出されてきている。さらに悪いのは、これが、北朝鮮の核とミサイル開発や、米国トランプ政権の明らかな揺らぎとともに進んでいることだ。日本国家はミサイル配備や空母保持など野放図な軍拡競争にすでに足を踏み入れており、経済構造もまた全体的な衰退とともに極端に官需に傾いて脆弱の度を強め、危機的な状況が拡大している。広告宣伝がフェイクニュースとつながり、情報による支配が自己目的化しているという悲惨なありようもまた現実だ。

昨年の「退位特例法」の制定後、天皇代替わりに向けたスケジュールが、日に日に具体化していっている。来年早々には「平成在位三〇年」が、そして来春四月末〜五月には明仁退位と徳仁の即位、さらに来秋の大嘗祭という流れは確定している。徳仁の即位とともに元号の改元も予定されているから、この夏には元号も発表されることになるだろう。かつて裕仁の時代の、死のカウントダウンと社会全体の「自粛」漬けのような状況は起きないとしても、「ニッポン」賛美の異様な社会状況は着々と広がっている。天皇の代替わりという国家イベントは、その形態において少しばかりかつてとは違ったものになったとしても、私たちを取りまく社会状況に深い翳りをもたらすことはまちがいない。

しかし、私たちは嘆いているつもりはない。天皇制の問題を自分たちの切り口として選択しながら、これまでいろいろな人びととのつながりを組み立ててきたのだ。私たちは今年もまた、二月一一日に、反天皇制の闘いを準備している。今回は、「『代替わり』と近代天皇制一五〇年を問う! 反『紀元節』二・一一行動」として、歴史問題を正面から問いただしていく闘いに取り組んでいく。この日には各地でもさまざまな取り組みがなされるだろう。ともに進んでいこう。

(蝙蝠)

【月刊ニュース】反天皇制運動Alert 19号(2018年1月 通巻401号)

今月のAlert ◉近代天皇制の歴史の内実を批判し「紀元節」を撃つ闘いを組み立てよう(蝙蝠)
反天ジャーナル◉きょうごくのりこ、闘病熊、宗像充
状況批評◉新春大放談! あにまる談議「どうなる!? 次期天皇制」
ネットワーク◉一人でも多く、辺野古に行こう!(中村利也)
書評◉『働く、働かない、働けば』〜〈2018 BROKEN JAPAN 〉を思い知るために (たけもりまき)
太田昌国のみたび夢は夜ひらく〈92〉◉願わくば子供は愚鈍に生まれかし。さすれば宰相の誉を得ん(太田昌国)
マスコミじかけの天皇制〈19〉◉「皇位の安定継承」が前提!?:〈壊憲天皇明仁〉その17(天野恵一)
野次馬日誌
集会の真相◉12・2 辺野古に行こう!新基地建設阻止ー名護市長選勝利をめざして/12・16 ナショナルイベントとしての東京五輪/12・22 アキヒト退位とナルヒト即位を考える練馬集会12・23 反天連集会「生前退位!? 」なにやっテンノー /12・24 「実質改憲」をゆるさない!! 天皇の、天皇による、天皇のための代替わり反対!集会(静岡)
反天日誌
集会情報

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*2018年1月10日発行/B5判16ページ/一部250円
*模索舎(東京・新宿)でも購入できます。

http://www.mosakusha.com/voice_of_the_staff/