【集会報告】「即位・大嘗祭」違憲訴訟、国側に一矢を報いる!

 二〇一八年一二月に提訴した「即位・大嘗祭」違憲訴訟。「代替わり」儀式が進行してしまうなかで裁判も進んできたが、昨年一二月二四日、東京高等裁判所において、予想外のことに「原判決破棄」の判決が出た。被告(被控訴人)の国に対して一矢報いたのである。

 その前に、この裁判の構造を整理しておく必要があるだろう。

 この訴訟は、現在二つの裁判で成り立っている。一つは「国賠請求裁判」で、これは二〇一八年末提訴の第一次訴訟と、二〇一九年三月の第二次提訴分が併合されて、合計三一八人の原告によって、現在までに四回の口頭弁論が東京地裁でおこなわれている。

 もう一つの裁判が、「代替わり」諸儀式の差し止めを求める裁判である。言うまでもないことだが、原告団で提訴した内容は国賠と差し止め一体であり、本来同一の法廷で審理されなければならないものだった。しかし地裁は、不当にもこの訴訟を、恣意的に「差し止め請求分」と「損害賠償請求分」とに分離し、異なる部に係属させて、別々に審理することにしてしまった。こうして裁判は二つ(第一次訴訟と第二次訴訟の別を入れれば四つ)に分れることになった。

 差し止め請求のうちの第一次訴訟分は、一回も口頭弁論が開かれないまま、昨年二月五日に東京地裁で却下、四月一七日に東京高裁で棄却決定と続き、最高裁も一〇月一日に上告棄却の決定を下してしまった。

 同じく分離された差し止め請求の第二次訴訟分についてだが、東京地裁は第一次同様、六月二八日に却下の判決を下した。原告団・弁護団は当然これに対して、控訴を申し立てた。すると、意外なことに東京高裁は口頭弁論を開くと言ってきた。一一月二六日の法廷は、控訴人(天野恵一さん)が意見陳述をしたものの、裁判長はきちんと聞いているようでもない。弁護団は、審理をきちんと継続しろと強く要求したが「却下」と言い放ち、たった一〇分で法廷は終わってしまった。

 そして一方的に指定された一二月二四日判決当日。前回の裁判長の態度から、不当判決必至と構えていた私たちの耳に聞こえたのは「原判決破棄・一審差し戻し」。?! もしかしたらこちらの勝ち? 判決内容は、地裁判決は原告側が主張した納税者基本権にもとづく差し止めを却下したのだが、人格権にもとづく請求については判断していなかったため、手続き上法令違反にあたる、という判断。形式的な理由とはいえ、結果的に、原判決の破棄と一審差し戻しを要求していた原告側の訴えが認められることになったわけで、予想外の結果に狼狽していたに違いない国側代理人の顔を見て、思わず嬉しい気持ちがわいたのも正直なところ。

 今後、被控訴人(被告)である国は、高裁判決を不服として最高裁に上告することになるのか。上告しなければあらためて一審で裁判をやりなおすことになるし、上告したらしたで、もし被上告人(原告)の逆転敗訴を導こうとすれば、最高裁で弁論を開く必要が生じるという、これもまた希有な展開になっていくはずである。ぜひ、注目していただきたい。 

 なお、国賠請求分の五回目の口頭弁論は二月五日(水)一四時三〇分から東京地裁の103号法廷。ぜひ傍聴して下さい。

(訴訟の会事務局/新孝一)

【集会報告】おわてんねっと集会「終わりにしよう天皇制2019」

 二〇一九年の「代替わり」反対を闘い抜いた「終わりにしよう天皇制!『代替わり』反対ネットワーク」(おわてんねっと)は、一二月七日、千駄ヶ谷区民会館で「終わりにしよう天皇制2019 12・7大集会&デモ」をもった。おわてんねっととしては(たぶん)最後の街頭デモを伴う集会である。 

 集会のオープニングは、すでにおなじみ「おっちんズ」の歌・「元号やめよう」。続いて、これも毎回好評のコント。舞台は怪しげなスナック「大嘗亭」。闘争の連続で多忙な中でもよく練られたシナリオと、「玄人はだし」の演技と声優ぶりが、何度も爆笑を誘った。引き続き、「11・9国民祭典」のスライド上映が行われた。構成と解説は桜井大子。各省庁が横並びで後援している奉祝式典なのに、「民間」主催という形式で、グロテスクな神道主義(日本神話の絵解き)が前面化していること、他方「嵐」や芸能人が登場して祝祭ムードを盛り上げていることが分析された。

 休憩を挟んで、リュウセイオー龍の舞踏。肉体をエネルギッシュに躍動させてのパフォーマンスに魅せられた。続いて「スライド&トーク 代替わり反対行動をふり返る」。前史も含めたおわてんねっとの活動を、司会の京極紀子と、井上森ほかおわてんねっとのメンバーが解説。ずいぶんいろいろな行動を重ねてきたものだ。最後に再び「おっちんズ」の歌・「天皇に平和語る資格なし」「天皇制はいらないよ」で、集会は終了。

 この集会で示されていたような多様な表現と行動、これこそが一年間の反「代替わり」闘争を支えたエネルギーであったことは明らかだ。

 その後渋谷デモに移り、原宿駅前から渋谷に向けてのデモ。右翼の姿はごくわずか。注目度は高く、宣伝カーからの呼びかけも好評だった。集会とデモの参加者は約一〇〇名。 

(北野誉)

【今月のAlert 】「さあ、戦争だ」「皇位継承問題だ」か?—私たちの言論闘争も開始だ!

 あっという間の年越しだった。二〇一九年、反天連は、終わりにしよう天皇制!「代替わり」反対ネットワーク(おわてんねっと)の仲間たちと走り続けた。二〇一八年末にバタバタと提訴した即位・大嘗祭違憲訴訟にも、反天連事務局メンバーはそれぞれ原告や訴訟の会の事務局として裁判を共にしてきた。また、同様に反天連も参加するオリンピック災害おことわり連絡会(おことわリンク)の一年前企画をはさんだ企画も多く忙しかった。そのほか各メンバーがそれぞれに関わる活動も少なくなく、反天連全体が文字通り怒涛の日々であった。例年の12・23集会はなくなり、一二月は少しはゆったりするのかと思っていたがそういうわけにもいかず、12・7集会でおわてんねっとはひと段落したものの(「集会の真相」参照)、今年の2・11反「紀元節」行動実の準備や即大訴訟の口頭弁論(「集会の真相」参照)と、年末まで走り続けた。

 政府の動きはさらに慌ただしく、「代替わり」行事のすべてが終わったかと思うタイミングで出てきたのは、一二月二七日の「自衛隊の中東派遣閣議決定」の報だ。派兵根拠は防衛省設置法の「調査・研究」というが、米国と、米国が求めていた「有志連合」へのエクスキューズ的な派遣であることは、新聞等でも明確に示唆している。「調査・研究」は防衛相の命令だけで実施可能であり、お手軽に派兵できる根拠法である。なんともきな臭い年の瀬であった。

 そして年明け早々に聞こえてきたのは、一月三日の米軍によるイラン革命防衛隊ソレイマニ司令官殺害だ。ソレイマニ司令官は最高指導者ハメネイ師に近い要人といわれる。そして八日には、イランによる米軍への「報復攻撃」。米軍が駐留するイラクの基地にミサイル攻撃したと報じられた。昨日(一〇日)には「米・イラン全面衝突を回避」の大文字に胸を撫で下ろすが、大きな火種は燃え続けている。問題の解決などいまだないのだ。そのような状況にあっても、安倍は派兵中止を打ち出さない。実質戦地への派兵であり、徳仁天皇制は明仁同様に戦争とともに始まった。

 その新天皇の一般参賀は参加者七万弱。決して多い数とは思わないが、それでもそんなに行くのかと、正月早々呆れ果てる。早朝から並んだという家族連れなどインタビュー映像が流されていたが、「平和を祈ってほしい」だの「自然災害のない一年を祈ってほしい」だの、これは初詣のかわりだなと思いつつ、天皇は祈る相手ではなく祈る人として認識されているのだなあ、と妙に納得する。まさに祭祀王であり、参加者たちはみなその信者ということになる。

 この天皇の「代替わり」の最終的な儀式として考えられているのが、四月一九日に予定されている「立皇嗣の礼」だ。天皇の弟・秋篠宮が立皇嗣(皇位継承順位一位であること)を宣言するという儀式で、国の主催で行うが、儀式の概要については今月中には決めるという。そしてこれが終了したらいよいよ「皇位継承者」問題の検討を始めるというのが政府のこれまでの見解だ。「退位特例法」には付帯決議として、「本法施行後速やかに」皇位継承問題の検討に入ることが書かれているが、安倍はそれを後へ後へと延ばしてきた。しかし、そろそろ始めないわけにはいかない。

 今年の反天皇制運動の大きな柱の一つは、この「皇位継承」問題をめぐる言論による戦いとなることは間違いない。これまでも何度もなされてきた議論である。そして私たちの結論はもちろん「誰がなろうと天皇はいらない」だ。しかし、なぜその結論になるのかを多くの人たちと共有できなければ、結論は空論だ。女性天皇容認が八〇%以上という世論の中で、「女性天皇も女系天皇も女性宮家もいらない」の根拠を、どれくらいの人たちと共有できるのか。反天皇制運動の正念場であるとも思う。今年も頑張りたい。

 まずは2・11反「紀元節」行動と2・23おわてんねっと集会だ。たくさんの参加を待っています。今年もよろしく!    

(大子)

【月刊ニュース】反天皇制運動ALERT 43号(2020年1月 通巻425号)

 

反天ジャーナル ◉ (映女、京極紀子、井上森)

状況批評 ◉ ナショナリズム煽動の先兵役─皇室祭祀詳説の代替わり報道(中嶋啓明)

ネットワーク ◉ 香港デモ:21世紀の自由と民主主義(陳孤独)

太田昌国のみたび夢は夜ひらく〈115〉◉ ゴーン騒動から何を読み取るか(太田昌国)

マスコミじかけの天皇制〈42〉◉ 「即位・大嘗祭違憲訴訟」高裁(第二次提訴)なんと「差し戻し」判決を勝ち取る!─〈壊憲天皇制・象徴天皇教国家〉批判 その7(天野恵一)

野次馬日誌

集会の真相◉おわてんねっと集会「終わりにしよう天皇制2019」/現在の〈日韓関係〉を天皇制帝国の植民地支配責任をふまえて考える/「即位・大嘗祭」違憲訴訟、国側に一矢を報いる!

反天日誌

集会情報

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*2020年1月14日発行/B5判12ページ/一部250円
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