【学習会報告】山田朗『日本の戦争Ⅲ 天皇と戦争責任』(新日本出版社・二〇一九年)

 本書は、天皇の戦争責任回避の根拠として定説となっていた、天皇「無答責」論と実態としての天皇の戦争不関与という間違いを正していくことを大きな目的に編集されている。一九九五年の「現代における〈戦争責任〉問題──天皇の〈戦争責任〉論を中心に」から、二〇一六年「『昭和天皇実録』の軍事史的分析」と、およそ二〇年間に書き積み上げられてきた研究論文の集大成である。

 著者は、様々な言論によって作り出された昭和天皇裕仁=「無力で戦争に消極的な立憲君主」といったイメージを覆すために、一次資料を丹念に読み、裕仁はただ座ってハンコを押すだけの無能・無害な君主では決してなかったことを証明するため、長期にわたる研究を続けてきた数少ない実証主義歴史研究者だ。一方で、裕仁の戦争関与に関する実態を暴露していくことで、これだけ作戦等への関与があったのだから戦争責任なしとは言わせないといった主張の新しさと説得力の強さに私たちは気を取られすぎ、明治憲法下で大元帥・戦争の最高責任者という地位にあるというだけで逃れようもないはずの責任から、逃れきったことの問題は伝わりづらくもなっていたかもしれない。著者にとっては当たり前のことであっただろうその側面が、それが目的であったかどうかはさておき、そのあたりもフォローされるような編集となっており、完璧さは増し、裕仁断罪への執念を感じさせる一冊だ。

 学習会では、天皇の曖昧で漠然とした「下問」によって作戦が変更されたりするあたりの詳細な記述に、天皇制の「忖度政治」の「伝統」を読み、天皇のわがままぶりに呆れ、久しぶりに裕仁への悪口三昧で盛り上がった。

 次回は、一二月一五日(火)、坂野潤治『明治憲法史』(ちくま新書)を読む。

(大子)

【集会報告】天皇も跡継ぎもいらない! 「立皇嗣の礼」反対緊急行動

 「立皇嗣の礼」が強行された一一月八日、「天皇も跡継ぎもいらない 11・8『立皇嗣の礼』反対緊急行動」が原宿・神宮橋で取り組まれ、渋谷・宮下公園までのデモを行った。主催は、「国家による『慰霊・追悼』を許すな! 8・15反『靖国』行動」。

 閣議では、この日各府省で「日の丸」を掲揚するほか、地方自治体や学校、会社などに掲揚への協力を求めることを決めた。衆参両院などは、「立皇嗣の礼」に祝賀の意思を表す「賀詞」を、決議していた。あらためて秋篠が「次」の天皇であると宣言するこの儀式は、まさに一連の「天皇代替わり」儀式の最後に位置づけられるものである。

 デモ出発前のアピールでは、主催者あいさつに続いて、反戦・反天皇制労働者ネットワーク、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)、オリンピック災害おことわり連絡会から連帯アピールを受け、最後に実行委メンバーが「緊急行動アピール」を読み上げた。

 集会後、表参道から渋谷に向けたデモに出発。「立皇嗣の礼に反対!」「天皇も皇嗣もいらない!」「皇位継承の儀礼を認めないぞ!」などのシュプレヒコールを響かせた。

 このデモに対しては、随所で右翼の攻撃が目立った。明治通りでは、デモ隊に突っ込んできた右翼によって転倒した参加者が負傷させられた。右翼の暴力を許さず、原則的に反天皇制運動を持続していこう。参加者は九〇名。

(北野誉/実行委)

【今月のAlert 】明仁天皇制の代替わりを経て次の時代をどう捉えるか

 一一月八日に秋篠文仁を「皇嗣」とするための、皇室典範にも旧皇室令にも規定のない「立皇嗣の礼」がなされた。これにより、二〇一六年七月に現「上皇」の明仁が生前退位の意思表明を行なったことにはじまる、天皇制の「代替わり」過程は一区切りしたことになる。私たちは、これに対しても反天皇制の実行委員会を組み立て、反対を表明する街頭行動を行なうことができた(詳細は別掲)

 これまでにもたびたび述べてきたように、虚構の「男系」血縁主義に基づく天皇制の「皇位」継承の流れは、継承の該当者がしだいに死滅していくことにより制度的にも危殆に瀕しつつある。天皇に関する制定憲法上の制限を大きく逸脱してその権能を拡大した、明仁の危機意識によるふるまいと、皇室典範特例法の制定により、今回の継承過程は済ませることができた。しかし、ほんらい明仁や他の皇族たちが望んでいた「皇位の安定的継承」につながる皇室典範の全面的な改定には、右派勢力の反対によって踏み出すことができなかったようだ。なお残る各国の王政においても徐々にすすめられつつある、性別を問わない長子継承制度など王位継承ルールの改定は、安倍やその周辺の影響が残る当面のあいだはなされないと思われる。

 「皇女制度の創設」という報道が、一一月二三日に一斉に流された。これは、女性「宮家」の創設により、形式的であれ女性皇族の「皇位継承」の可能性を残すものとはまったく異なっており、皇室典範第一章はもちろん、女性皇族がその婚姻後に皇族から離脱するという皇室典範一二条も、皇族から離れたものが復帰できないという同一五条にも触れるものではない。元女性皇族が、「皇室の負担軽減」のため特別職の国家公務員になるというものであり、そのための「尊称」なのだという。これが天皇や皇族たちの意図する一族の安定とは異なり、かつ、皇族「もどき」の存在を増やすことで、皇室経済や警護など制度面を拡大することは想像に難くない。すでに結婚の意思を明らかにしている眞子ら秋篠の二人の娘や、愛子、天皇の妹の黒田清子らが「皇女」として想定されているらしい。

 天皇制やその維持につながる提案や行動には、いっさい与することをしたくないが、かといって、天皇制の存続が悠仁ひとりに託されたことで、より困難で危うくなることが明らかでも、このような新制度による弥縫策に加担するわけにいかない。法と制度の規範的な役割を考えれば、皇室典範の定める女性皇族の不平等と劣位は、この国家の人権制度全体にも影響を及ぼしているのであり、「皇女制度」にも反対するのが当然だ。

   ❖ 

 このかん、君主制の安泰を誇っていた国々でも、その権力に対する批判がさまざまに噴出している。公然と反対者を暗殺するサウジアラビアほどではないとしても、宗教的権威や軍とも一体化した権力を誇ってきたタイの王政に対し、プーミボンの二〇一六年の死後、後継となった現在のラーマ十世への批判が、今年になって大規模な大衆運動として連日にわたり展開している。ウェブメディアのプラチャタイ(https://prachatai.com/english/)によると、最近も、莫大な資産が王室財産法により隠蔽され、一族が在住していたドイツなどヨーロッパに隠されていることへの批判が、学生らによる行動として噴出している。今年はコロナの影響でマイナスが見込まれるとはいえ、一時のアジア経済危機を除いて長期にわたって拡大を続けたタイの経済は、国王の私腹を大きく肥やしてきた。これに対する批判も「不敬罪」により圧殺されてきた。こうした認識は、大衆的な問題意識として共有されつつあるという。

 いま、私たちは、二月の「紀元節」や「天皇誕生日」に抗議する運動の準備をはじめると同時に、この五年近くにわたる第一〇期の反天皇制運動連絡会の活動の総括を開始している。二〇一六年の初夏に開始した今期のテーマは、しばしば病を伝えられてきた「明仁のXデー」であった。それは、直後の退位意思の表明により想定とは異なる形で展開したが、一連の「代替わり」過程に向けて、十分ではないとしても持続的に意味ある闘いを提示することができたはずだ。とはいえ、そのスタートから三〇年にも及ぶ明仁天皇制との対峙は、個々人の意志と身体にとっては、誰にとってもまったく楽なものではなかった。どのように区切りをつけるか、友人たちとともに考えていきたい。

(蝙蝠)

【月刊ニュース】反天皇制運動ALERT 54号(2020年12月 通巻436号)

 

反天ジャーナル ◉ (捨てられし猫、映女、機関にすぎない天皇とは違うね)

状況批評 ◉ 政権の危機と運動の危機(小倉利丸)

ネットワーク ◉ 「その支出、ちょっとまったぁ!」─「京都・主基田抜穂の儀違憲訴訟」を提訴(高橋靖)

太田昌国のみたび夢は夜ひらく〈126〉◉ コロナの時代に観る『スパイの妻』(太田昌国)

マスコミじかけの天皇制〈53〉〈壊憲天皇制・象徴天皇教国家〉批判 その18◉ 象徴天皇の「代替わり」と「菊タブー」(天野恵一)

野次馬日誌

集会の真相◉天皇制を考えるwamセミナー、スタート!/崎原盛秀さんを悼む/「天皇も跡継ぎもいらない! 「立皇嗣の礼」反対緊急行動/いまこそ中止だ 東京五輪! 11・8街宣&13集会&15デモ

学習会報告◉ 山田朗『日本の戦争Ⅲ 天皇と戦争責任』(新日本出版社・二〇一九年)

反天日誌

集会情報

 

→前号の目次はこちら

*2020年12月1日発行/B5判12ページ/一部250円
*模索舎(東京・新宿)でも購入できます。
http://www.mosakusha.com/voice_of_the_staff/