【集会報告】『ブラックボランティア』著者 本間龍さんを迎えて

 一二月七日、文京シビックセンター・シルバーホールで、「オリンピック災害」おことわり連絡会(おことわリンク)主催の学習講演会「『ブラックボランティア』著者 本間龍さんを迎えて」が行われた。本間さんのネームバリューの割には、宣伝期間が短かったためか、参加者は五〇名ほど。

 本間さんは話題になった『ブラックボランティア』(角川新書、本紙昨年一〇月号に、おことわリンクの「暗黒聖闘士」さんの書評あり)の著者で、今回の2020東京オリンピックにおけるボランティア問題について「果敢に切り込んでいる」方。同書では「国、JOC、電通、メディアがスクラムを組んで国民をブラックボランティに扇動し、反対しにくい空気を作るのは、先の大戦時のような、悪しき全体主義というべきである」と書かれている。

 東京で開催されるオリンピックでは、一一万人ものボランティア(大会ボランティア八万、都市ボランティア三万)が募集されている。年末には一八万人の応募があったと報じられた。だが、予算三兆円がつぎ込まれる一大商業イベントであるにもかかわらず、アルバイトではなく労働の対価なしの無償ボランティア(日当一〇〇〇円、交通費、宿泊費は自腹)をあてこんでいるのは「アマチュアリズムを装った労働詐欺」だと本間さんは言う。

 多くの大学では、ボランティア動員の片棒を担いで、この時期にある前期試験を繰り上げたり、特別に単位を与えるとか、就活にも有利だとか……。おことわリンクでは、これはまさに国策イベントに対する「学徒動員」の構造ではないかと捉え、国大協や私大協などに対する申し入れなども行なってきた。

 当日の本間さんの講演は、同書で展開されていたような内容を軸として、金を落とすシステムとしてのオリンピックの構造、企業の協賛と電通の仕切り、オリンピックボランティアの業務内容、オリンピック組織委員会の「ボランティア戦略」についてなど、多岐にわたった。とくに、ロンドン五輪などとも比較して、ボランティアの健康(命)の責任を持つべき部署が実質的に不在であること、ボランティアへの報酬どころか、オリンピックを主催する側は「ボランティアは育成するのに金がかかる」とさえ考えていることなどが指摘された。

 酷暑のオリンピックは「インパール作戦」になぞらえて語られるが、それは人間を無償の資源として使い捨て、そのために全社会的に国策への動員を果たしていこうという指向性においても、大日本帝国と同じだなあ、と改めて感じた。

(北野誉)