昨年末から開催されている明仁の退位と徳仁の即位等に関する「式典委員会」が、「退位礼正殿の儀」「剣璽等承継の儀」「即位後朝見の儀」のほか、二月二四日に実施される「天皇在位三十年式典」などについて概要を決定したという。それによると、二月二四日と五月一日には各省庁に「国旗」を掲揚させ、地方公共団体のほか、学校、企業、その他一般に対しても同様に掲揚するよう「協力方を要望」するとしている。もちろんこれは「奉祝」という装いをした強要であり、天皇および天皇制国家に服従し「まつろう」かどうかを、団体や個人にまでつきつけるものとしてある。明仁の即位において実質的に復活した「登極令」は、今回の退位〜即位の経過で、あらためて天皇制の「伝統」の地位とともに、記述されない法的な地位をも確立しようとしているわけだ。
さらに、「在位三十年慶祝行事」なるものが、各省庁や関連する法人にまたがって、すでに数多く開催されまた予定もされている。もちろん、即位関連としては、この秋には「即位礼正殿の儀」にはじまる「国事行為」の儀式・式典が予定されており、詳しく伝えられていないが、主基田と悠紀田をめぐる亀卜など「大嘗祭」に向けた数々の皇室神道における宗教儀礼の準備も開始されているはずだ。
このように、いよいよ天皇制をめぐり、私たちにとっての正念場となる状況を迎えつつある。二月には、いつも私たちは反「紀元節」の「実行委員会」として闘いを提起することから、その一年の流れを組み立ててきた。今年もまた二月一一日には「天皇『代替わり』に反対する 2・11反『紀元節』行動」の集会とデモが呼びかけられている。これへの参加から、この「天皇代替わり」という事態に対抗する大衆的な運動を提起していこうとしている。
しかし、今年は例年とは違って、この実行委による闘いにとどまらない。はじめに触れたように、二月二四日には政府主催による「天皇在位三十年式典」が国立劇場で開催されることになっており、全国の天皇制に反対する人々が連なる「終わりにしよう天皇制!『代替り』に反対するネットワーク」(おわてんねっと)により、「在位三〇年記念式典」に反対する銀座デモが提起されている。
また、植樹祭・海づくり大会・国民体育大会という、いわゆる天皇による「三大行事」に「国民文化祭」が加えられ、新天皇となる予定の徳仁(夫妻)による全国への巡行がはじまり、茨城国体への闘いにも参加の呼びかけが届いている。さらに、「即位・大嘗祭違憲訴訟」も二月二五日から口頭弁論を開始する。これらのいずれもきわめて重要な意味を持つものばかりだ。これらの闘いに向け、心から参加と支援をお願いしたい。
●
さて、今年はまた、四月に統一地方選挙が、七月に任期満了となる参議院の選挙も予定されており、その結果は、憲法改悪へとまっすぐにつながるものとしてある。この状況での天皇の代替わりは、まさにそれこそが天皇制の役割でもあるのだが、「ハレ」の意識の奉祝ムードを、政府やその意に忖度を重ねるメディアがかき立てることにより、極右の安倍自公政権をアシストするものとなる可能性が高い。
昨年末からの日韓「レーダー照射」騒ぎは、情報操作を経て、日韓の戦争・戦後責任をめぐる問題を問う声をかき消し、メディアと世論は排外主義に満ちた色へと変わった。街宣右翼のメシの種ともなってきた「北方領土」も、安倍や河野ら政府自身の手により消え失せつつある。かの利権まみれの恥知らずたちが喧伝してきた「アベノミクス」だが、官庁による文書や分析の根拠となる統計が捏造されたものだったことが、厚労省など官僚たちから露呈しているにもかかわらず、その責任も、直接に損失を被った人々への保障もまったく不明で、むしろ隠蔽されつつある。さらに竹田JOC会長らによる東京五輪招致にまつわる贈賄など、数えきれないほどの日本国家の腐敗状況までも、天皇制のイベントはもみ消す力を発揮しそうだ。
しかし、それでもなお、いや、だからこそ私たちは強く異議の声を上げ続けていく。ともに進もう。
(蝙蝠)