某鉄道会社のCMじゃないけれど、「そうだ、京都行こう!」という衝動が定期的に訪れる。
京都に行くと、必ず立ち寄るお気に入りの場所の一つに、韓国式の喫茶店がある。そこにあるチラシは私の興味をひくものが多くて、いつも行き当たりばったりの旅を充実させてくれる。かなり以前に訪れた時にとてもステキなデザインのチラシが目にとまった。長い間、我が家の台所の壁を飾ってくれて生活にすっかり溶け込んでいたけれど、油でべとべとになってしまい、残念ながらリノベを機に処分した。それは高麗美術館のチラシで、ずっと訪れたいと思いつつ、今回、「石の文化と朝鮮民画」展で初めてお邪魔することができた。
静かな住宅街に韓国式の土塀があらわれ、大きな二体の石人が出迎えてくれる。もうこの時点で幸せな気分でなんともわくわく。進んで美術館庭園のいっぱいの石人さんの魅力にウフフ。玄関を入ると、正面に白磁壷が目に入る。この美術館の創設者である鄭詔文さんが「今日」の始まりと紹介される壷だ。二階部分に資料や映像を観るコーナーが用意されている。
『思想の科学』に「日本の中の朝鮮文化」を連載した金達寿や、「こんな戦争は間違っている。天皇陛下のためになんか、死にたくない」とはっきり否定した婚約者に「わたしやったら、喜んで死ぬわ」と言って、日の丸の小旗を持っておくりだした自分を「加害の女」と問いつづけた岡部伊都子は、創設に関わった主要メンバーである。
鄭さんのご両親は西陣織の職人だったそうだ。私は恥ずかしいことに、たくさんの在日朝鮮人の方々が西陣織の産業を支えてこられたことを今回初めて知った。
「朝鮮・韓国の風土に育った『美』は今もなおこの日本で、言語・思想・主義を超えて、語りかけております。どうぞ、心静かにその声をお聴きください」と鄭さんの想い。皆さんもぜひお出かけください。
(鰐沢桃子)