【今月のAlert 】ヘイトと権威主義のパンデミックこそ警戒し対抗しよう

 これまで感染症が世界的に蔓延していった経過には、単純な交易にとどまらない植民地などの経済政策が大きな役割を果たしたことが知られている。その罪はいまだ償われておらず重大である。しかし、病気を媒介するのが細菌やウイルスなどであれば、少しばかりの公衆衛生や治療環境の整備と、個々人の日常的な対応によって、その危険性のほとんどは抑え込むことができるというのが現在の知見だろう。もちろん、それすらも叶わないことがしばしばあるというのは、疾病における歴史的社会的不正なのだが。

 これらなかなか達成が及ばない現実を前提としながらも、それをさらに「悪性」のものとしていくことは許されない。短期間の国際的な「緊張緩和」が過ぎ去ると同時に、反動として憎悪と恐怖の政治がやはり国際的に巻きおこされ、その繰り返しとともに自由や平等といった価値が毀損させられていくというのは、これまでにも何度もあったことだが、その頻度が増しているのは、やはり「情報化」と人の移動が独占資本と独裁国家の下で大々的に展開されている、今世紀の二〇年のことだろう。いま、中国湖北省武漢市での「新型肺炎」のウイルス感染の発生を前に、きわめて醜悪な社会的状況がつくられている。

 それは例えば、感染者にとどまらない中国人全般に対する世界的な「嫌悪」としてすでに現れている。中国などの経済的政治的影響力の増大に対する「警戒」の言説は、これまでもあったが、アメリカのトランプ政権のめちゃくちゃというしかない「自国優先」と他国を敵視する政策によりさらに拡大した。「敵国」をつくり出すことにより権力者への求心力をもたらそうとする政策は、独裁体制において顕著だが、これが世界的に拡がっている。国内的には、それは他者に対するヘイトとなり、とりわけ日本国家の中では、在日コリアンや中国・韓国・朝鮮人たちに対して限りなく拡大するヘイトクライムとなっている。現在それは、人の移動ばかりでなく中国に関連する多数のものの「入国禁止」を求めるゼノフォビアの言説として繰り広げられつつある。ウイルスによってもたらされる疾病や症状よりも、インターネットことにSNSによって広げられ流通する「嫌悪」や「恐怖」のほうが、ウイルスよりも「変異」が早く、そのもたらすものは、すぐに発現しないとしても個人や社会の中に深く沈潜して、おぞましい結果を生みだしていくのではないか。

 インナーサークルに利権をもたらし、少しでもその利害に背くものには、脅迫や懲罰的権力の発動を平然とする安倍の支配体制が、揺らぎながらも、その飛沫によりむしろ腐敗をまき散らすかっこうで続くなか、こうした社会情勢を利用しようとする策動もまたなされている。典型的には、徳仁の即位のさいの「国民祭典」において延々と「万歳三唱」を繰りひろげた伊吹文明による、憲法に「緊急事態」の条項を加える形での改憲策動である。今回の一月三〇日の発言におけるそれは、もちろんすぐさま批判を浴びているが、感染症のひろがりや、自然のもたらす大災害の発生など、あらゆる機をとらえ社会不安をかき立てながら、いつなんどきリアルなものとして立ち現れるかは予断を許さない。

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 私たちは現在、二月一一日の「紀元節」には「代替わりに露出した天皇神話を撃つ!2・11反『紀元節』行動」を、さらに、徳仁の誕生日である二月二三日には、これまでの代替わり過程に力を尽くしてきた「おわてんねっと」を締めくくる「天皇のいない民主主義を語ろう」討論集会を開催しようとして準備中だ。

 それぞれの集会の開催の主体こそ違え、めざすところは同じものをさしている。恥知らずで野放図な政治や資本の暴力と、それにぴったりと寄り添う天皇制の権威主義的国家は、「他者」を閉じ込め、批判者から自由を収奪しながら形成されていく。これらを許さない取り組みを、ほんの少しずつでも拡大し影響をもたらしていこう。あらためて集会への参加と開かれた議論を呼びかけたい。

(蝙蝠)