雨の8.15行動が終ったその3日後、私は暑い香港にいた。本紙でも何度か紹介されている安倍靖国参拝違憲訴訟には、たくさんの海外からの原告がいるが、香港の古い友人もその一人だ。その彼女に会うこと、そして彼女が法廷で証言し、紹介した、旧日本軍による香港占領を伝える「香港法治の旅」を、彼女の案内で歩くことが香港行きの目的の一つだった。
日本軍が香港を占領するまで最高裁判所としてあった建物は、日本軍占領下、憲兵隊本部として使われ、弾圧の拠点とされた。無法で暴力的な軍事占領の象徴的存在だ。司法の最高機関を軍によって蹂躙したこの歴史を、東京地裁の裁判官はどのように聞いたのか。だが、彼女の証言は裁判官の胸にはどのようにも響かなかったようだ。判決文では一顧だにせず、そのような歴史を是認あるいは無きものとする、安倍、靖国、国を無条件に容認した。
日本軍による銃撃の痕が残る石造りの古い西欧風建造物たち。それは西欧列強国の支配の跡でもある。今回の「法治の旅」をとおして、古い建物たちの、その美しさとは裏腹の、幾重にも支配の跡を残す傲った顔が見えてくるのだった。
翌日、その裁判所に向かって歩く政治犯釈放を求めるデモに、友人に誘われて参加した。道路はみるみる人で膨れあがり、路面を走るトラム10数台が連なり、いたるところでストップしている。歩道からコールが投げかけられ、歩く人々が呼応する。主催者がそれとして見えないデモの参加者は10万人だったとか。参加者は実に自由に歩いていた。
大国支配の歴史を生きる香港の人々の自治と民主化を求めるデモは、とてもアナーキーで力強く、そして冷静で熱かった。
(大子)