八月のテキストは若手研究者の新刊書。これまで反天連学習会で何度も議論してきた占領期の天皇制分析だ。とはいえ、著者の視点やアプローチの方法が違えば私たちの論点も増えるので、何度でもOKさ。
本書では、主に昭和天皇と側近たち、日本政府、GHQの「三つの勢力の言動分析を中心に、これらの勢力の周囲で奔走していた関係者などにも注意しながら、象徴天皇制の成立過程を検証」されている。特徴は、天皇や側近たちの厖大な日記、関係者たちのメモ等をもとに分析が進められており、記述内容の信憑性など疑いつつも、これまで読んでいたテキストを裏付けていくような分析も多い。いまではよく知られている、当時の天皇側近たちによる天皇の政治関与を巡る暗躍もなまなましく、議論の素材としてはおもしろいテキストだった。
著者の茶谷は、榎原猛による「君主制の国家形態分類」を引き、戦後の象徴天皇制を「象徴君主保持国会制的間接民主制」と規定する。GHQが模索した天皇制の形態もこれであって、それに抵抗する昭和天皇と側近たち、支配者層の時代が長く続くが、明仁天皇によってそれがようやく「確立」したという。
へ? それでよかったのか!? 著者に詰め寄りたくなるような結論に、このような分類自体が問題を見えづらくするのではないか等々、さらに議論は展開。しかし本書は、この結論を導くために書かれているのでは、とも思えてくる。
実はこの本は、本誌7月号(一三号)の書評欄で、国富建治さんによって紹介されている。そちらもぜひ参照していただきたい。
次回は九月二六日(火)。テキストはまたしても新刊:吉田裕ほか編『平成の天皇制とは何か』(岩波書店、二〇一七年)。
(桜井大子)