ここにきてやっと安倍政権支持率が急落し、三〇パーセントを切ったという。そしてすべての疑惑を放り投げたままの内閣改造。八月二日には新閣僚が発表された。さすがに第二次安倍政権発足時のような、「お友だち」で埋め尽くす人事はできなかったようだが、これですべての疑惑をうやむやにし、安倍は生き延びるつもりなのだろうか。
安倍が追い詰められているのは、直接的には次々と出てくる疑惑・スキャンダル問題が大きいとはいえ、これまでの無茶苦茶な国会のありようの結果でもあり、粘り強い「安倍ヤメロ!」の声の結果でもある。だから、内閣改造ごときで生き延びさせるわけにはいかないのだ。
国会内外からの追及の手をいまこそ強めていくしかない。さらなる大きな声をあげていこう。
その安倍政権が短期間でつくりだした数々の悪法は、安倍内閣の行方とは無関係にすでに動きはじめている。反天皇制の運動に直接関わる天皇の「退位特例法」も同様で、すでに七月二八日には、退位・即位・改元に向けたスケジュールについて想定される日程が公表された。
二〇一八年一二月下旬に退位・即位し一九年一月一日改元、一九年三月末に退位し四月一日即位・改元という二案だ。
政府は「国民生活への影響」を最小限に抑えるためとして前者を、宮内庁側は年末年始は「重要な皇室行事(祭祀)」が相次ぐので後者を推しているという。天皇制にも元号にも反対する私たちは、どちらにも与することはできない話である。ただハッキリ言えることは、少なくとも法律に基づく改元の時期等に関する政治的なスケジュールについて、天皇家の私的な行事である祭祀を理由に、天皇側が政府の方針に口を出すという事態のおかしさである。憲法二〇条の政教分離の原則にも、政治に関与してはならないという憲法四条にも触れるはずだ。なによりも、天皇一人の都合ではなく、一億二七〇〇万の「国民」の都合が先なんじゃないのか?その「国民」もいまでは天皇への「敬愛・理解・共感」が法律で定められてしまっているのだが。さすがにここまでくれば多くの人の目にも、これまでよりは「非国民」が素敵に見えてくるのではないかとさえ思う。
このかんの「天皇退位特例法」制定をめぐって天皇の不満の声が漏れ聞こえてきているが、少なくとも一年前のビデオメッセージで語った天皇の意思は天皇にとって理想的な形で法律に反映されている。憲法第六条・七条で厳しく規定されている行為以外の、いわゆる「象徴行為」「公務」と呼ばれてきたものを法律レベルで認めさせ、「国民」の「敬愛・理解・共感」までも法律で取りつけ、天皇の意思とこの「国民の理解」云々で、次期天皇の生前退位も可能とさせる余地すら作り出させた。不満などあるはずもなかろうと思うのだ。不満どころか抗議すべきは私たちの方である。
この天皇の不満話については、小堀桂一郎らが、天皇が強い不満を漏らしていたという『毎日新聞』の記事をめぐり、天皇の発言を記者に漏洩したなどとして氏名不詳の宮内庁幹部職員と毎日新聞社の社長、記者に対する国家公務員法違反(秘密漏洩)罪の告発状を東京地検特捜部に提出した、という。天皇の発言は「重大な秘密として厳重に秘匿すべき法律上の義務があるのというのだ。
伝統主義的右派の立場で、何をどのように問題にしていいのかわからなくなっているのではないかと思える告発について、ここで言及するつもりはない。ただ、今の事態を批判的に評する意見として、このようなウルトラ右翼の見当違いな告発くらいしか表に出さないメディア状況、言論状況は深刻な事態なのだ。天皇の違憲行為、それを忖度する国会の意見状況を批判する私たちの、たとえば天皇個人および国会議員に出した「8・15 行動準備会」による二種類の抗議文については、まったくなきものとされた。私たちはメディア各社に抗議文およびその提出について事前に案内を出しているにもかかわらず、まったく無視されたことは、繰り返し伝えておきたい。
明仁のビデオメッセージから一年。このかんに私たちが見てきたことは、こういった伝統主義右翼も、リベラルを標榜する層も、国会、メディア、市民社会全体が、それぞれの立場で天皇を忖度したてまつる情景だった。この社会の低すぎる民主主義の底上げのためにも、このかんの天皇問題を外しては考えることはできない。一足飛びは無理だが、一歩ずつめげずに進んでいくしかない。
まずは8・11 集会、8・15 デモへ!
(大子)