年末には「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」のおおよその流れが固まったと伝えられる。明仁自身は、退位ないし譲位を可能とし皇位の安定的継承をもたらす方向での、皇室典範など関連法規の大幅な変更を望んでおり、八月八日の「メッセージ」以降も、皇族たちや「友人」などにより明仁の意向が流されている。一二月二三日発表の記者会見ではこれ以上に踏み込む内容は避けられ、「有識者会議」の結論を待つかたちになっているが、今月二〇日から六月一八日までとされる今回の通常国会会期中に、これを成立させることが、天皇の代替わり過程からも日程的に求められている。
安倍らは、トランプ現象によるあからさまにバブルな円安・株価上昇を後ろ盾にした、早期解散をも合わせてもくろんではいるが、とはいえ、そのようなスケジュールが、いかに暴力的な安倍政権下においても容易に実現できるとは考えられない。ましてや、「共謀罪」を新設する「組織犯罪処罰法」の改定までも、今国会に上程されようというのだ。右翼らが「皇室関係の法律を政争の中に置くな」と叫び脅迫する図も、いまから目に浮かぶようだ。
この腐敗しきった安倍の国家が、メディアと「世論」を支配するための道具として用いているもう一つの柱が軍事と外交政策だ。しかし、これも無惨としか言えない状況で、暴力と宣撫工作を拡大することでのみ支えられている。オスプレイの墜落事故は、沖縄・辺野古や高江への基地建設への怒りの正当性をかぎりなく明確に見せつけた。一年以上にもわたって領土問題を宣伝したあげく、プーチン大統領に軽くあしらわれた安倍の宴会政治の失敗ぶりは、嘲笑をしか生み出せなかったばかりでなく、シリアなど中東の状況にも政府や外務省が無能無策であることを印象づけるものだった。鳴り物入りで訪れた真珠湾への「慰霊」とやらは、戦争をインチキ作家たちの生み出す「架空戦記」もどきにしか認識できていない安倍の醜態をさらけ出した。
一二月二五日付で、各国の学者や専門家五三名により、「真珠湾訪問にあたっての安倍首相への公開質問状」が出されている。そこでは、真珠湾攻撃ばかりでなく、真珠湾攻撃に先立って行われたマレー半島をはじめ、アジア太平洋地域の他の地域への攻撃、そして何よりも中国や朝鮮半島における侵略戦争の責任をも問われているのだ。「公開質問状」は、「首相としてあなたは、憲法九条を再解釈あるいは改定して自衛隊に海外のどこでも戦争ができるようにすることを推進してきました。これがアジア太平洋戦争において日本に被害を受けた国々にどのような合図として映るのか、考えてみてください」と結ぶ。ところが、これに対する安倍の「回答」は、じつに露骨なものだった。それこそが、米国訪問にも同席した稲田朋美防衛相による、帰国直後の一二月二九日の靖国神社参拝であったと言えるだろう。韓国・釜山において、一二月三〇日に設置された「平和の少女像」に対して、居丈高に吠える菅官房長官や外相らは、日本国家の侵略戦争への責任や歴史問題が、ますます重大なものとなっていることを世界中に印象づけた。それはまた、天皇であれ首相であれ、これらの事実を「慰霊」などという宗教行為や金で覆い隠すことなどできないことを、この上なくはっきり示している。
これまで書いてきた内容は、しかし、なんと、このAlertの前号からわずかひと月の間に起きたことを、ほんの少しつまんだだけのものなのだ。私たちの前にある課題は、あまりにも大きすぎると、ため息をつかずにいられない。だが、すでに私たちは新たな行動を起こしている。二月一一日の反「紀元節」の行動は、天皇の代替わりに向かう状況の中で、この日本国家が、どれほど虚構に満ち溢れたものであるかを明らかにし、これを撃っていくものだ。「戦後」の日本、「戦後」の天皇制国家が、歴史事実から逃避して神話に逃げ込む、まさに象徴天皇が捏造としてあるゆえんの、汚濁した国家の祝日として捏造されたのが、この「紀元節」である。多くの人々が、この日のデモと集会に参加されることを強く呼びかけたい。
(蝙蝠)