【今月のAlert 】本格的な「代替わり」論議を始めよう! 12・23集会へ!

一一月二〇日、吉祥寺の井の頭公園でおこなわれた「生前退位!? 皇族解散しろ! 天皇制いらないデモ」に、反天連メンバーもほぼ全員が参加してきた。当日の数日前から、右翼と警察の不穏な動向について流れてはいたが、しかし、あんなにひどい右翼の暴力と警察の横暴を体験することになるとは。それは、私たちの経験でいえば、2・11、4・28─29、8・15デモの過去数年分を引っ張り出し、右翼の妨害がひどかった各シーンを、デモの間中ずっとつなぎあわせてしまったような行動で、天皇代替わり状況が本格的に始まり、私たちのこれからの行動を、腰を据えて考えなくてはならない地点に立っていることを思わせるに十分だった。

七月のNHKによる天皇「生前退位」の意向報道と、八月の、「生前退位」の言葉を一言も入れずに、しかし明確に「生前退位」とそのための法整備に「国民の理解」を求めたビデオメッセージ以降、言論による闘いの必要性を感じていた。そういう思いはますます強くなってきている。

もちろん私たちは、すでに準備を始めた来年の2・11行動をはじめ、デモなどの街頭行動および討論集会等を、これまでどおり準備していく。そのなかで、この天皇の「生前退位」問題をどのように捉えるのか、さまざまな批判の視点を、多くの人びとと共有することが、いまなによりも急がれているように思うのだ。

天皇制が闇の部分として隠し持っている暴力性が、いま全面的に表に出始めている。それは、わかりやすい構造ともいえる。しかし、その暴力性とはまったく無縁の如く存在する現実の天皇は、いまなお、護憲天皇・平和・民主天皇というベールをスッポリかぶったままである。むしろ、安倍政権やそのお友だちと思われている右翼、暴力団的な部分とは対極に鎮座しているというのが一般的な認識であろう。その神話を崩すことができないまま、この新しい事態、生前退位問題、天皇代替わり問題を闘うのは、あまりにも厳しい。いま眼前にある、たとえば代替わりとそれをめぐって出てくるさまざまな事態に対応しつつも、その一歩手前の天皇制の本質的な問題を社会的に共有できるかどうかが、やはり私たちの運動の根本にある課題であることを再認識せざるを得ない。

天皇代替わり状況を、それとして社会にアピールしているのが、天皇の意向を受けて設置された、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」だ。一一月に入り、七日、一四日、三〇日と、有識者会議ではそれぞれヒアリングを三回開催した。一応、ヒアリング対象者の名前だけは出しておこう。第一回が平川祐弘、古川隆久、保阪正康、大原康男、所功。第二回が渡部昇一、岩井克己、笠原英彦、櫻井よしこ、石原信雄、今谷明、そして最後のヒアリングは、八木秀次、百地章、大石真、高橋和之、園部逸夫。有識者会議については、本紙前号の本欄、今月号の状況批評も参照していただくとして、ここでは一言だけ。

少なくとも、有識者会議の雲行きは天皇に都合のいいようには動いていない。それは最初から見えていたことだ。天皇が何よりも望むのは、アキヒト天皇が築き上げてきた「平成流」象徴天皇制を、安定的に継承させていくことである。それは、つねに「理想的な象徴」という天皇がいる日本社会である。そして、女系・女性天皇も含むだろう皇位の安定的継承であり、女性宮家容認をも含むだろう天皇家・皇族の維持・拡大であろう。

現段階では、それらは何一つ前に進んではいない。ヒアリングの結果は、「生前退位」を容認する専門家は半数だが、その大半は特例法、すなわち一代限りの容認であり、恒久的な法改正を語る専門家は二人のみだ。天皇のわがままをなんとかギリギリ受け入れるという構造に、歯ぎしりする天皇が想像される。新聞にも、焼け石に水のような「長年の友人」の言葉が出てきたりするが、天皇や宮内庁の焦りが見えてくる。

こういった象徴天皇制再編の過程そのものが、天皇制の現在としてある。どちらも象徴天皇制の理想を掲げた、天皇制かくあるべき論と、現実論であり、そのあいだのどの地点に落ち着こうと、現憲法にも、民主主義にも、主権在民の思想にも、基本的人権にも、ことごとく反する天皇制である。そのことを、多くの人びとと共有する言論として私たちは作りだしていく必要があるのだ。
12・23の反天連討論集会は、そのことを大いに意識しながら準備していきたい。多くの方の参加を呼びかけます。本格的な「代替わり」論議と、根本的な象徴天皇制論議を同時に押し進めていこう!

(桜井大子)