前回報告がなされた第Ⅰ部の続きである第Ⅱ部『明治皇室典範の成立過程─「近代化」と「萬世一系」』が今回のテキスト。構成は、一・皇位継承をめぐって─「庶出ノ天皇」「女帝否認」、二・「天皇の退位」否認をめぐって、終章・「萬世一系」と「天皇の不自由」との関係で成る。
憲法学者である著者は、憲法本体が基礎とする権利保障体系と民主主義(国民主権)原理が、天皇制と矛盾態であるという。 旧皇位継承法の、「女帝」排除に帰結する男系男子のみの皇位継承と皇位の生前譲渡(天皇の退位)に限定し、それがどのようなものであったかという歴史的分析、解釈可能性の追究を通し、〈憲法とはなにか〉〈憲法を解釈するということは、どういうことなのか〉を考える基礎固めとして書かれているが、とても平易な言葉でわかりやすい。
「祖宗の大憲」にもとづく、権威の再構築のスローガンを背景に、明治憲法制定に尽力した井上毅や伊藤博文ら。そこには何の整合性もない。立憲民主主義的には、原理を欠いた「消極的なるもの」という評価の「暫定なるもの」にコンセプトが置かれ、その中身があぶりだされる。今、こうした歴史を踏まえたうえで、天皇制問題を語ることが出来る学者がいなくなったという意見で、学習会では一致した。原理を踏まえた理論的なものではなく、原理原則を棚上げした暫定措置は、日本国憲法に連続して継承されていると著者奥平は言う。終章で語られる「天皇の脱出権」で皆の議論は大いに盛り上がった。
憲法に照らし天皇制を批判していくということを、私たちはもっと丁寧に行うべきではという思いが強まる。
次回は一月三一日(火)、テキストは加納実紀代・天野恵一編『平成天皇の基礎知識』(社会評論社)。
(鰐沢桃子)