アキヒト退位・ナルヒト即位問題を考える練馬の会」の集会が、一二月二二日、千本秀樹さんを講師として開催された。
千本さんは「象徴天皇制、何が問題か」と題して問題提起。明仁天皇は、一六年夏のビデオメッセージにおいて、「国民」の情動に直接に働きかけることで、自身の退位と時代の天皇の即位に向けた流れを、憲法や皇室典範の枠組みを踏み越えてつくりだした。こうした行為が可能だったのは、「象徴天皇制」として再構築された天皇の権威・権力が、あらためて価値づけされ、行使されてきたことにある。そしてそれは、天皇の「護憲」発言や、死者の「慰霊」「追悼」をかつての戦場や大災害の被災地をめぐって行い、その姿を報道させることによって、より強固なものとされてきた。いまやそれは「最強の象徴天皇制」とも言いうるほどで、虚言と強権の政治を次々に繰り出す安倍政権よりも強い「統合力」を発揮し、政権批判の立場をとる人々の「支持」すらもとりつける。しかし、重視せねばならないのは、天皇制の「統合力」がまさに政権を補完することによってこそ拡大しているということだ。
「代替わり」の国家イベントに「国民」意識が組み込まれていきながら、政治システムも軍隊・警察も、所有も、社会の中での人間の関係、差別構造も、指一本触れられることなく残され、国家権力が恣意的に行使されていく。この国家的なイベントの中で、あらためて自らの人権を確立させ、対抗していくことがほんとうに大切なことであるということが、講演では、さまざまな方向から論じられた。なお、この日の講演の資料として配布されたのは、「現代の理論」http:// gendainoriron.jp/ 第10 号(一六年一一月)と第11 号(一七年二月)所収の千本さんの論文なので、内容については参照を。参加者は三〇数名。
前号の「ネットワーク」欄で池田五律さんが紹介してくれたように、今後、この会は「準備会」としてではなく、正式に発足する。ともに進んでいこう。
(蝙蝠)