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【今月のAlert 】「代替わり」を問う一年のスタート 2・11反「紀元節」行動に集まろう!

年末には「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」のおおよその流れが固まったと伝えられる。明仁自身は、退位ないし譲位を可能とし皇位の安定的継承をもたらす方向での、皇室典範など関連法規の大幅な変更を望んでおり、八月八日の「メッセージ」以降も、皇族たちや「友人」などにより明仁の意向が流されている。一二月二三日発表の記者会見ではこれ以上に踏み込む内容は避けられ、「有識者会議」の結論を待つかたちになっているが、今月二〇日から六月一八日までとされる今回の通常国会会期中に、これを成立させることが、天皇の代替わり過程からも日程的に求められている。

安倍らは、トランプ現象によるあからさまにバブルな円安・株価上昇を後ろ盾にした、早期解散をも合わせてもくろんではいるが、とはいえ、そのようなスケジュールが、いかに暴力的な安倍政権下においても容易に実現できるとは考えられない。ましてや、「共謀罪」を新設する「組織犯罪処罰法」の改定までも、今国会に上程されようというのだ。右翼らが「皇室関係の法律を政争の中に置くな」と叫び脅迫する図も、いまから目に浮かぶようだ。

この腐敗しきった安倍の国家が、メディアと「世論」を支配するための道具として用いているもう一つの柱が軍事と外交政策だ。しかし、これも無惨としか言えない状況で、暴力と宣撫工作を拡大することでのみ支えられている。オスプレイの墜落事故は、沖縄・辺野古や高江への基地建設への怒りの正当性をかぎりなく明確に見せつけた。一年以上にもわたって領土問題を宣伝したあげく、プーチン大統領に軽くあしらわれた安倍の宴会政治の失敗ぶりは、嘲笑をしか生み出せなかったばかりでなく、シリアなど中東の状況にも政府や外務省が無能無策であることを印象づけるものだった。鳴り物入りで訪れた真珠湾への「慰霊」とやらは、戦争をインチキ作家たちの生み出す「架空戦記」もどきにしか認識できていない安倍の醜態をさらけ出した。

一二月二五日付で、各国の学者や専門家五三名により、「真珠湾訪問にあたっての安倍首相への公開質問状」が出されている。そこでは、真珠湾攻撃ばかりでなく、真珠湾攻撃に先立って行われたマレー半島をはじめ、アジア太平洋地域の他の地域への攻撃、そして何よりも中国や朝鮮半島における侵略戦争の責任をも問われているのだ。「公開質問状」は、「首相としてあなたは、憲法九条を再解釈あるいは改定して自衛隊に海外のどこでも戦争ができるようにすることを推進してきました。これがアジア太平洋戦争において日本に被害を受けた国々にどのような合図として映るのか、考えてみてください」と結ぶ。ところが、これに対する安倍の「回答」は、じつに露骨なものだった。それこそが、米国訪問にも同席した稲田朋美防衛相による、帰国直後の一二月二九日の靖国神社参拝であったと言えるだろう。韓国・釜山において、一二月三〇日に設置された「平和の少女像」に対して、居丈高に吠える菅官房長官や外相らは、日本国家の侵略戦争への責任や歴史問題が、ますます重大なものとなっていることを世界中に印象づけた。それはまた、天皇であれ首相であれ、これらの事実を「慰霊」などという宗教行為や金で覆い隠すことなどできないことを、この上なくはっきり示している。

これまで書いてきた内容は、しかし、なんと、このAlertの前号からわずかひと月の間に起きたことを、ほんの少しつまんだだけのものなのだ。私たちの前にある課題は、あまりにも大きすぎると、ため息をつかずにいられない。だが、すでに私たちは新たな行動を起こしている。二月一一日の反「紀元節」の行動は、天皇の代替わりに向かう状況の中で、この日本国家が、どれほど虚構に満ち溢れたものであるかを明らかにし、これを撃っていくものだ。「戦後」の日本、「戦後」の天皇制国家が、歴史事実から逃避して神話に逃げ込む、まさに象徴天皇が捏造としてあるゆえんの、汚濁した国家の祝日として捏造されたのが、この「紀元節」である。多くの人々が、この日のデモと集会に参加されることを強く呼びかけたい。

(蝙蝠)

【月刊ニュース】反天皇制運動Alert 7号(2017年1月 通巻389号)

今月のAlert ◉ 「代替わり」を問う一年のスタート 2・11反「紀元節」行動に集まろう!(蝙蝠)
反天ジャーナル ◉まおう鳥、きょうごく のりこ、井上森
状況批評 ◉ 立憲主義と象徴天皇制─生前退位問題を契機として─(中北龍太郎)
太田昌国のみたび夢は夜ひらく〈80〉 ◉ 何よりも肝要なことは「アジアとの和解」だ (太田昌国)
マスコミじかけの天皇制〈07〉 ◉ 「内閣と相談しながら」というコトバの政治的意味:〈壊憲天皇明仁〉その5(天野恵一)
書評 ◉ 「リベラル派」のアキヒト天皇論(千本秀樹)
ネットワーク ◉ ゆんたく高江について紹介します。(ほしのめぐみ)
野次馬日誌
集会の真相 ◉ 12・4「天皇賛歌」にうんざり!「女性(的)天皇制」の今とこれから/12・15 天皇制を考える市民講座─天皇の「生前退位」を議論しよう/12・16 立憲主義と「生前退位」/12・23天皇の「象徴的行為」ってなんだ!?─「代替り」状況のなかで考える/12・23 改憲状況の中の「生前退位」─天皇元首化とどう闘うか?(静岡)
反天日誌
集会情報

→前号の目次はこちら

 

*2017年1月12日発行/B5判16ページ/一部250円
*模索舎(東京・新宿)でも購入できます。

http://www.mosakusha.com/voice_of_the_staff/

[学習会報告] 奥平康弘『「萬世一系」の研究 「皇室典範的なるもの」への視座』第Ⅱ部(岩波書店、二〇〇五年)

前回報告がなされた第Ⅰ部の続きである第Ⅱ部『明治皇室典範の成立過程─「近代化」と「萬世一系」』が今回のテキスト。構成は、一・皇位継承をめぐって─「庶出ノ天皇」「女帝否認」、二・「天皇の退位」否認をめぐって、終章・「萬世一系」と「天皇の不自由」との関係で成る。

憲法学者である著者は、憲法本体が基礎とする権利保障体系と民主主義(国民主権)原理が、天皇制と矛盾態であるという。 旧皇位継承法の、「女帝」排除に帰結する男系男子のみの皇位継承と皇位の生前譲渡(天皇の退位)に限定し、それがどのようなものであったかという歴史的分析、解釈可能性の追究を通し、〈憲法とはなにか〉〈憲法を解釈するということは、どういうことなのか〉を考える基礎固めとして書かれているが、とても平易な言葉でわかりやすい。

「祖宗の大憲」にもとづく、権威の再構築のスローガンを背景に、明治憲法制定に尽力した井上毅や伊藤博文ら。そこには何の整合性もない。立憲民主主義的には、原理を欠いた「消極的なるもの」という評価の「暫定なるもの」にコンセプトが置かれ、その中身があぶりだされる。今、こうした歴史を踏まえたうえで、天皇制問題を語ることが出来る学者がいなくなったという意見で、学習会では一致した。原理を踏まえた理論的なものではなく、原理原則を棚上げした暫定措置は、日本国憲法に連続して継承されていると著者奥平は言う。終章で語られる「天皇の脱出権」で皆の議論は大いに盛り上がった。

憲法に照らし天皇制を批判していくということを、私たちはもっと丁寧に行うべきではという思いが強まる。

次回は一月三一日(火)、テキストは加納実紀代・天野恵一編『平成天皇の基礎知識』(社会評論社)

(鰐沢桃子)

【今月のAlert 】本格的な「代替わり」論議を始めよう! 12・23集会へ!

一一月二〇日、吉祥寺の井の頭公園でおこなわれた「生前退位!? 皇族解散しろ! 天皇制いらないデモ」に、反天連メンバーもほぼ全員が参加してきた。当日の数日前から、右翼と警察の不穏な動向について流れてはいたが、しかし、あんなにひどい右翼の暴力と警察の横暴を体験することになるとは。それは、私たちの経験でいえば、2・11、4・28─29、8・15デモの過去数年分を引っ張り出し、右翼の妨害がひどかった各シーンを、デモの間中ずっとつなぎあわせてしまったような行動で、天皇代替わり状況が本格的に始まり、私たちのこれからの行動を、腰を据えて考えなくてはならない地点に立っていることを思わせるに十分だった。

七月のNHKによる天皇「生前退位」の意向報道と、八月の、「生前退位」の言葉を一言も入れずに、しかし明確に「生前退位」とそのための法整備に「国民の理解」を求めたビデオメッセージ以降、言論による闘いの必要性を感じていた。そういう思いはますます強くなってきている。

もちろん私たちは、すでに準備を始めた来年の2・11行動をはじめ、デモなどの街頭行動および討論集会等を、これまでどおり準備していく。そのなかで、この天皇の「生前退位」問題をどのように捉えるのか、さまざまな批判の視点を、多くの人びとと共有することが、いまなによりも急がれているように思うのだ。

天皇制が闇の部分として隠し持っている暴力性が、いま全面的に表に出始めている。それは、わかりやすい構造ともいえる。しかし、その暴力性とはまったく無縁の如く存在する現実の天皇は、いまなお、護憲天皇・平和・民主天皇というベールをスッポリかぶったままである。むしろ、安倍政権やそのお友だちと思われている右翼、暴力団的な部分とは対極に鎮座しているというのが一般的な認識であろう。その神話を崩すことができないまま、この新しい事態、生前退位問題、天皇代替わり問題を闘うのは、あまりにも厳しい。いま眼前にある、たとえば代替わりとそれをめぐって出てくるさまざまな事態に対応しつつも、その一歩手前の天皇制の本質的な問題を社会的に共有できるかどうかが、やはり私たちの運動の根本にある課題であることを再認識せざるを得ない。

天皇代替わり状況を、それとして社会にアピールしているのが、天皇の意向を受けて設置された、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」だ。一一月に入り、七日、一四日、三〇日と、有識者会議ではそれぞれヒアリングを三回開催した。一応、ヒアリング対象者の名前だけは出しておこう。第一回が平川祐弘、古川隆久、保阪正康、大原康男、所功。第二回が渡部昇一、岩井克己、笠原英彦、櫻井よしこ、石原信雄、今谷明、そして最後のヒアリングは、八木秀次、百地章、大石真、高橋和之、園部逸夫。有識者会議については、本紙前号の本欄、今月号の状況批評も参照していただくとして、ここでは一言だけ。

少なくとも、有識者会議の雲行きは天皇に都合のいいようには動いていない。それは最初から見えていたことだ。天皇が何よりも望むのは、アキヒト天皇が築き上げてきた「平成流」象徴天皇制を、安定的に継承させていくことである。それは、つねに「理想的な象徴」という天皇がいる日本社会である。そして、女系・女性天皇も含むだろう皇位の安定的継承であり、女性宮家容認をも含むだろう天皇家・皇族の維持・拡大であろう。

現段階では、それらは何一つ前に進んではいない。ヒアリングの結果は、「生前退位」を容認する専門家は半数だが、その大半は特例法、すなわち一代限りの容認であり、恒久的な法改正を語る専門家は二人のみだ。天皇のわがままをなんとかギリギリ受け入れるという構造に、歯ぎしりする天皇が想像される。新聞にも、焼け石に水のような「長年の友人」の言葉が出てきたりするが、天皇や宮内庁の焦りが見えてくる。

こういった象徴天皇制再編の過程そのものが、天皇制の現在としてある。どちらも象徴天皇制の理想を掲げた、天皇制かくあるべき論と、現実論であり、そのあいだのどの地点に落ち着こうと、現憲法にも、民主主義にも、主権在民の思想にも、基本的人権にも、ことごとく反する天皇制である。そのことを、多くの人びとと共有する言論として私たちは作りだしていく必要があるのだ。
12・23の反天連討論集会は、そのことを大いに意識しながら準備していきたい。多くの方の参加を呼びかけます。本格的な「代替わり」論議と、根本的な象徴天皇制論議を同時に押し進めていこう!

(桜井大子)

【月刊ニュース】反天皇制運動Alert 6号(2016年12月 通巻388号)

今月のAlert ◉ 本格的な「代替わり」論議を始めよう! 12・23集会へ!(桜井大子)
反天ジャーナル ◉ つるたまさひで、宗像充、核女
状況批評 ◉ 政教分離と天皇制(北野誉)
太田昌国のみたび夢は夜ひらく〈79〉 ◉ フィデル・カストロの死に思うこと (太田昌国)
マスコミじかけの天皇制〈06〉 ◉ 「平成代替り」状況に露出する〈暴力とタブー〉:〈壊憲天皇明仁〉その4(天野恵一)
書評 ◉ 『反東京オリンピック宣言』(国富建治)
書評 ◉ 『援護法で知る沖縄戦認識―沖縄戦認識の共有をもとめて』 (千葉宣義)
野次馬日誌
集会の真相 ◉ 11・13天皇「生前退位」と安倍政権を考える/11・20生前退位!?皇族解散しろ!天皇制いらないデモ/11・23被曝労災に対する損害賠償を求める11・23集会
学習会報告 ◉ 奥平康弘『「萬世一系」の研究 「皇室典範的なるもの」への視座』第Ⅱ部(岩波書店、二〇〇五年)
反天日誌
集会情報

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*2016年12月6日発行/B5判16ページ/一部250円
*模索舎(東京・新宿)でも購入できます。

http://www.mosakusha.com/voice_of_the_staff/

【学習会報告】奥平康弘『「萬世一系」の研究 「皇室典範的なるもの」への視座』第Ⅰ部(岩波書店、二〇〇五年)

本書は序章・I部・II部でできており、今回は序章と第I部を読んだ。頁数的にもお値段的にも二回分、という感じではある。ただ、内容的には分けずにやった方が、議論はさらに面白くなったのかもしれない。いや、時間不足の欲求不満になったか……。実際、I部だけで大いに盛り上がった。

第I部「戦後皇室典範の制定過程─今日的課題の源流」の構成は、一・「皇室典範的なるもの」への拘泥─皇室典範の基本的性格をめぐって、二・「天皇の退位」「女帝」「庶出の天皇」─皇室典範の各論的考察。

一九四五年八月一五日、あるいは一九四六年一月一日の「人間宣言」を機に、「萬世一系」の天皇信仰がコロリと消滅するわけはない。それは支配者層を構成する者たちにとっても同様だ。本書では「帝国憲法」とそれに並ぶ「皇室典範的なるもの」への支配者たちの拘泥ぶりを、新憲法制定とそれに則って制定される新しい「皇室典範」制定の際の、意識・無意識な策略や見解をエピソードとして紹介しながら、あぶり出していく。「皇室法」ではなくなぜ「皇室典範」という名称を継承したか、は典型的な議論だ。そのエピソードの数々が面白い。

奥平のいう「萬世一系の天皇」という一つのイデオロギー体系が、戦後のGHQとの攻防、国会審議等を経る中で、少しずつ譲歩しながらも新憲法の体系にくい込み、現在に継承されている。それを知ることで、現在の「今日的課題の源流」を理解することもできるだろう。

各論の「今日的課題」とは、一〇年以上も経った二〇一六年現在の、支配者層が直面している課題そのものである。そして、別の立場で私たちも同様に直面している。

昨年亡くなった著者奥平が生きていてくれたら、何を語っただろうかと、唸る思いが残る。

次回は一一月二九日(火)、この本の後半部分を読む。

(桜井大子)

【今月のAlert 】「有識者会議」の討論を検証し、批判の声をあげよう!

八月八日の天皇の「生前退位」の意向を表明するビデオメッセージを受け「有識者会議」が設置された。正式には「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」。その初会合が一〇月一七日に、そして二七日に第二回会合が開かれた。繰り返しになるが、この「有識者会議」が天皇自身のビデオメッセージを受けて設置されたことは自明であり、それによって退位の制度化に向けて政治が動きだしたということを否定する者はいないだろう。これは明らかに、憲法四条に反して天皇が「国政に関する権能を有し」たことであり、違憲行為である。

だから、その指摘を回避するために、二ヶ月以上経過しての初会合の日程が設定され、名称に「生前退位」の語句を挿入しないという配慮がなされたという。聴取項目が八つ設けられ、天皇の役割、天皇の国事行為や公務のあり方、負担軽減の方法、摂政を置く是非、国事行為を委任することの是非を検討した上で、後半に、天皇の退位の是非の議論を持ってくるという順番にも考慮がされたという。

座長の今井敬経団連名誉会長は記者会見で、「天皇のご発言とは切り離して考えていく」と強調し、「生前退位」についても「まったく予断なく議論する」と発言している。明らかな天皇の違憲行為が言及されることなく、「配慮」されるものへと変質している。

有識者会議が年末までに専門家からヒアリングを行い、来年初めに「論点」を公表し、来春には「提言」を取りまとめ、それを受け政府が関連法案を提出。そして一八年一月の天皇即位三〇年に向かうという流れを政府は目指しているらしい。オリンピックまでに新天皇即位の流れが着々と準備されている。

そして、この有識者会議の議論は非公開でなされ、議事録は発言者の名前を伏せ概要のみが公開されるという。
その理由は「静かな環境で、率直に自由な意見交換をするため」ということらしいが、議論は公開されるべきであるし、議事録はすべて記録されるべきだということは大前提として、ちょっと深読みしたくなるフレーズである。発言によっては右翼の大音量の街宣車が押し掛けたり、発言した内容によっては、身の危険を感じる事態になる危惧が想定されているのかしらと。

まあ、意見聴取者一六人のメンバーの名前をみる限り、そんな心配は無用で天皇制ありきが大前提の議論で終始することは明らかだが。

そもそも天皇制は権威秩序と治安維持法等による補強政策によって、支えられてきたという歴史がある。天皇に対する敬慕といわれているものは、市井の人々から自然発生的に表れたとはいいきれないだろう。「神聖ニシテ侵スヘカラス」という帝国憲法の規定によって、弾圧に伴う暴力によって強要され、批判を許さない体制の中で維持されてきた。天皇制批判は常に身の、いや命の危険を伴う暴力と隣あわせにあった。敗戦後、国民主権によって天皇は象徴になったが、マスコミ報道の過剰な敬語使い一つを例にとっても、相変わらず「神聖ニシテ〜」の精神が醸成され続けている。

非公開について政治学者の白井聡は東京新聞で、天皇の「お言葉」とのくい違いを指摘する以下のコメントをしている。「天皇のメッセージの本質は国民の皆さんに考えてくださいということ。自分がこうしたいということではなく、より広く、天皇とは何か、国民統合の象徴とは何かを議論してほしいという趣旨だった。会議の密室性は『お言葉』と逆行する─。」と。

密室性の問題が主権者側の知る権利の不利益ではなく、天皇の意向に沿わないからよろしくないというものだ。憲法に規定されている国民主権の原則を問われる発言といえる。民主主義と天皇制の矛盾を問うどころか、天皇制が憲法に規定された制度であるという原則さえもなく、あまりにもやすやすと天皇発言に乗っかっている。護憲派天皇対極右安倍政権という図式は、結局、天皇制国家というナショナリズムに取り込まれるという危惧が、今回の天皇メッセージを巡る状況で露呈し確認されたような言論で溢れている。

憲法で謳われている人民主権の原理が、運動側においてさえ崩壊しつつあるように思う。この危機的状況下、私たちは天皇のビデオメッセージの語句を丁寧に検証し、批判の声を具体的にあげていく。恒例の12・23の集会を楽しみに!

(鰐沢桃子)

【月刊ニュース】反天皇制運動Alert 5号(2016年11月 通巻387号)

今月のAlert ◉ 「有識者会議」の討論を検証し、批判の声をあげよう!(鰐沢桃子)
反天ジャーナル ◉ (捨て猫、なかもりけいこ、大橋にゃお子)
状況批評 ◉ 象徴天皇制は「裸の王様」(山口正紀)
ネットワーク ◉ 暮らしの中の沖縄─本土に住む私たちの責任 (古荘斗糸子)
ネットワーク ◉ 軍拡予算を批判する討論集会への参加を!(池田五律)
太田昌国のみたび夢は夜ひらく〈78〉 ◉ コロンビアの和平合意の一時的挫折が示唆するもの(太田昌国)
マスコミじかけの天皇制〈05〉 ◉ なぜか天皇による違憲行為が「護憲〈平和主義〉天皇」の「お気持ち」として賛美される倒錯した〈構造〉:〈壊憲天皇明仁〉その3(天野恵一)
野次馬日誌
集会の真相 ◉ 10・8/9 山岡強一虐殺30年 山さん、プレセンテ!/10・16差別・排外主義を許すな!10・16ACTION/アンダークラス上等!非正規労働者と戦争扇動─山岡強一虐殺30年「山さんプレセンテ!」アフタートーク/10・21〈ベ平連〉その反戦交友録─吉川勇一の『非暴力直接行動への宿題』を素材に
学習会報告 ◉ 奥平康弘『「萬世一系」の研究 「皇室典範的なるもの」への視座』第Ⅰ部(岩波書店、二〇〇五年)
反天日誌
集会情報

→前号の目次はこちら

*2016年11月8日発行/B5判16ページ/一部250円
*模索舎(東京・新宿)でも購入できます。

http://www.mosakusha.com/voice_of_the_staff/

【学習会報告】岩波新書編集部編 『昭和の終焉』(岩波書店、一九九〇年)

ちょうどXデーから一年経って岩波新書編集部が出した岩波新書。八人の論者が書いた論考を集めたもの。井出孫六だけが書き下ろしで他は「世界」や「マスコミ市民」に掲載された論考だ。どれもXデー直後に書かれたものなので、当時の緊張が行間に滲み出ている。

豊下楢彦「『天皇・マッカーサー会見』の検証」は最初朝日新聞に一九八九年二月六・七日に掲載されているが、この時は「天皇とマッカーサー会見」。担当した朝日新聞の記者が天皇のあとに「・(ナカグロ)」をつけると右翼から「不敬」だと非難されることを恐れて「と」となったという。今から見ると笑えるが、当時の空気を象徴している。

最も興味深かったのは、巻頭の奥平康弘の「日本国憲法と『内なる天皇制』」。観念論的な「内なる天皇制論」ではなく憲法論として「内なる天皇制」を展開しているところにその特徴がある。奥平は憲法の天皇制の諸規定こそが「内なる天皇制」にとっての栄養源だとし、これまで憲法学者は民主主義の基準に照らして天皇の地位や役割を最小限度のものにする解釈論を提示するよう努めてきたが、それでは国事行為以外の行為に関して憲法で論じられない限界があると指摘する。「国体」概念も「主権の所在」は変更されたのだから「国体」は崩壊したのだが、文化現象としての天皇崇拝へと「国体」概念のすり替えに成功したと捉える。
さらに憲法制定以前に帝国議会がさっさと旧皇室典範を修正して生存退位への道を開いた上で天皇の退位を決議する方法を取るべきだったという奥平の言う「ありえてよかった」選択は今だからこそ含蓄深い。

次回は一〇月二五日。今回の奥平の議論をさらに深めるために奥平康弘『万世一系の研究』を読む。

(宮崎俊郎)

【集会報告】第4回女天研講座「ジェンダーと天皇制」

九月二一日夜、四回目になった女天研連続講座は、首藤久美子さんが「女性皇族の公務──慰問? 福祉?」というタイトルで、高円宮久子が東京オリンピック招致の際のスピーチをした話からスタートした。

明治時代に入って、「大日本帝国憲法」と同格の「皇室典範(旧)」を整備するのと並行して、西洋をお手本とした近代化のなかで男女の性差をも利用した天皇制が作られた。明治天皇・大正天皇のそれぞれの皇后も養蚕、慈善、戦傷兵士慰問などを行ってきたが、それらは「男性によって象徴される規制の権威や体制への異議申し立てとして女性神格が『逆さまの世界』を作り出す手段として有効だった」とした若桑みどりさんの分析は、今の女性皇族の捉え方、打ち出し方もその延長線上にあるのではないかと首藤さんは語る。

現在の女性皇族のおびただしい数の名誉職を紹介したあと、全国赤十字大会に出席して発言している香淳皇后(良子)の珍しい映像(始めて声を聞いた!)、そして壇上に美智子(名誉総裁)を先頭に女性皇族がぞろぞろと入場してくる姿(かなりきもい)を映したDVDを鑑賞した。「女」としての役割のお手本のようにコメントする人もいる。天皇制そのものが「女性的」なのではないか。また、天皇のさらに上に「国体」をおき、その「国体」に奉仕をする、天皇を頂点にした「国民」のヒエラルキーが存在しているのではないか、と首藤さんは問うた。

今の女性皇族の「公務」としている仕事にフォーカスして考えるというのは、天皇制の現在的問題点を考える意味でもとても重要だ。だいたい名誉総裁ってなに? スポーツ界、医学会、芸術関係の多くの団体が名誉総裁として皇族、特に傍系の女性皇族が多く担っている。それを頼む側の論理はどうなっているのだろう。皇族に頼むと箔が付くのか、それぞれの業界の発展に有利に働くのか。首藤さんの問いかけは容易に結論の出るものではないが、「天皇制とジェンダー」という講座のメインテーマそのものであり、今後も講座の通底するテーマであると思った。

(中村ななこ)