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【呼びかけ】反天皇制運動連絡会 第Ⅹ期への呼びかけ(二〇一六年六月)

第Ⅱ期以降、三年ごとにいったん解散・再結成という区切りを設けながら、Ⅸ期まで活動を重ねてきた私たち反天連は、いま第Ⅹ期にむけてスタートしようとしている。反天連は、ヒロヒト「Xデー」状況との闘い、大衆的政治闘争としての反天皇制運動を目ざして、一九八四年に結成された。当時、中曽根首相が打ち出した「戦後政治の総決算」というスローガンや、「不沈空母発言」「靖国公式参拝」などに象徴されるような日米同盟の強化、新自由主義的・新国家主義的な政治志向のもとで、民衆統合支配の装置としての天皇制の「浮上」が、運動圏においても強く意識され始めていた。その後の反天皇制運動は、私たちもその一翼を担いつつ、八九年のヒロヒト「Xデー」と新天皇の「即位・大嘗祭」反対運動の全国化・大衆化として、大きな広がりを作り出していった。

それからすでに三〇年以上もの時間が過ぎた。非自民連立政権の成立や右派勢力の巻き返し、政権交代などのジグザグを経て、いまや、解釈改憲によって集団的自衛権行使を解禁し、違憲の安保法制を強行可決し、緊急事態条項をひとつの突破口として明文改憲をすすめようとする安倍政権によって、八〇年代以来の政治方向が完成させられようとしている。

これにたいして、現在、国会前やさまざまな場所で、安倍政権の強権政治に対する人びとの声、立憲主義の蹂躙を許さない運動の大きなうねりが続いている。しかし、そこに「反天皇制」ということばが占める余地は、ほとんど無に等しいかのようだ。そこには、私たち自身の主体的力量といった問題以上に、「Xデー」以後の天皇制、すなわち「アキヒト・ミチコ天皇制」というものの性格が反映しているといわなければならないだろう。

戦後天皇制は、一貫して非政治的、平和主義的なものであるというイメージでとらえられてきた。それは、天皇の「人格賛美」を日々繰り返すマスコミによって支えられ、総じて現実政治に関わらない、戦後民主主義体制に適合的な支配のシステムとして合意されてきた。とりわけアキヒト・ミチコは、ヒロヒト時代に十分果しえなかった「開かれた皇室」、戦争責任からクリーンであり、「皇室外交」にも積極的な「国際化時代の天皇制」として登場し、さらには海外を含めた戦争被害者の「慰霊」、原発事故や自然災害の被災地を精力的に回ることによって、「祈り」と「癒し」の担い手としての顔をも前面に出していった。「宗教的」とさえいえる「無私の祈り」に励んで見せることが、人びとの間に、天皇の権威を再組織していることを無視することはできない。そういった意味において、私たちは、アキヒト・ミチコ天皇制は、象徴天皇制に期待される役割を果すことにかなり成功しており、その「国民統合」のあり方は「象徴天皇制の完成形態」であるとさえ考えている。

そのことは、現在、安倍政権に批判的な人びとの中から、アキヒト・ミチコを「リベラル」であり平和憲法秩序を大切にしていると評価し、それと比較して安倍を批判するというロジックが繰り返し登場していることにも現われているだろう。天皇主義者である安倍を、実は天皇も批判していると言いたいのかもしれないが、それは政治的に演出された天皇の「無垢性」に依拠しつつ、その権威を前提とする議論でしかない。

私たちはまず第一に、国家の政治的なシステムとして天皇制を考える。

三年前、第Ⅸ期の開始にあたって私たちは、「国家の機構でありながら、それとは独立して超然と存在しているかのようにふるまう象徴天皇制は、そのふるまいにおいて、文化的・平和的な場面における民衆統合の装置であり続けるだろう。……それゆえに私たちは、運動の中においてさえ繰り返し登場する『リベラルな天皇への期待』なるものをも批判していかなければならない。そしてそれは、多くは八・一五、さらには三・一一などに象徴される『追悼の政治』の場面において発動される天皇制の批判ともなるだろう」。そして、第二次安倍政権の登場が「右翼的・神権主義的な天皇制の強化に繋がると考えるべきではない」と主張した(「第Ⅸ期への呼びかけ」二〇一三年三月)。
それより以前、民主党政権の時代にも私たちは、むしろ「ソフト・イメージの〈アキヒト─ミチコ〉天皇制は……民主党政権の方にマッチしている。こちらの方こそ、私たち反天皇制運動の正面の敵ともいえよう」とも主張していた(「第Ⅷ期への呼びかけ」二〇〇九年一二月)。戦後象徴天皇制は、アメリカの占領体制のもとに、サンフランシスコ体制=日米安保体制を軸として作りだされた戦後日本の構造の一部にほかならない。「国民統合の象徴」として戦後憲法に制度化された象徴天皇制にとって、戦後憲法体制に適合的な民主党政治のほうが、天皇制のあり方をも含めて変えていこうとしている自民党の改憲政治よりも、当然にも戦後憲法下の天皇像を積極的に演じてきたアキヒト・ミチコにとって「意に沿う」ものであっただろうという判断もあった。民主党の凋落と自民党の再登場によって、天皇制の権威化が予想されるが、本質的には政権政党の「政治利用の対象」としての天皇という役割は変わらないであろう。「天皇元首化」を掲げた自民党の改憲草案においても、天皇は依然として「象徴」であるように、けっして「統治権の総覧者」としての天皇制の復活を志向するものではありえない。

象徴天皇の役割は、さまざまな国家的儀礼において「国民統合の象徴」という役割を担うことであり、国家の行為を権威づけ正統化し、「国民」の幻想的共同性を担保することである。天皇家や皇族の人間に対する無条件の絶対敬語と人格賛美は、そのまま統合された国民によって成り立つ国家の無条件の賛美にほかならない。それはまた、皇室の「私事」とされる「皇室祭祀」の祭主であることとも連動して、日本の文化・伝統の体現者ともみなされることになる。

私たちは、第Ⅹ期を、「次」の「Xデー」状況の開始を見すえつつ、このようなアキヒト・ミチコ天皇制の現段階をこちら側から「総括」し、国家・社会の再編にともなう天皇制の再編=再定義の方向性をとらえ、その中から、天皇制の生み出す「現実」に対する批判と行動を持続していきたいと考える。

私たちがなすべきことは、天皇制廃絶を一般的にスローガンとして語ることではありえないし、「国民運動」における天皇批判の不在を嘆くことでもない。私たちの運動は、「慰霊」や「皇室外交」における戦争責任・植民地責任の隠ぺい、天皇の移動などにともなって常に起こる人権侵害や治安弾圧、「日の丸・君が代」強制、世襲の特権的身分制度にともなう差別、靖国問題や国家の宗教性、ナショナリズムと排外主義の問題など、天皇制に関わって具体的に日々起きている事象との具体的な対決をおいてほかにない。それらは、反「Xデー」闘争以来の闘いを通じて、私たちも含めた反天皇制運動がつかみ取った「運動としての民主主義」に関わる課題であり、したがってそれは、さまざまな運動とのつながりと相互の協力関係なしにはなしえない。

一人でも多くの方の参加、協力、支援をお願いします。

(反天連事務局)

【表紙コラム】

とうとう、Ⅹ期をスタートさせる時間に入ってしまった。平成天皇制のXデー状況とXデーと闘う。これがこの期の軸である。「反天連」は昭和天皇Xデー及びXデー状況に抗するという運動課題をかかげて結成された運動体である。30年以上の運動の持続があり、まさか天皇Xデー闘争を、もう一回体験するなどということはまったくの想定外であった(特にこんな病体のままで)。

この間、私たちの「読書会」のテキストに、私の『マスコミじかけの天皇制』(1990年・インパクト出版会)が使われた。それは新聞・週刊誌・TV・雑誌に洪水のごとくあふれた「皇室情報」の中を私自身が独力で泳ぎきった記録である。読みなおして気がついた。

私たちは「代替わり」のスタートの時点で、平成天皇制(アキヒトーミチコ天皇制)は、ずいぶん遅れてやってきた象徴天皇制の、かなりスマートな(平和憲法にマッチしたという意味での)完成形態であることに、それなりに自覚的であった。

いいかえれば、今、天皇主義右翼安倍政権に抗する様々なテーマの政治的社会運動の中に、アベの暴走に不快感を表明しているアキヒト天皇一族の「護憲=平和発言」への期待を口にする人が少なくないという、とんでもなく倒錯した事態がうまれる必然性。これを、いち早く予感しながら、反天皇制運動を持続してきたのである。〈護憲・平和イデオロギー〉こそが象徴天皇制のナショナリズム(国民的一体感づくり)の中心軸なのだ。「即位」の時点の「護憲」発言に、期待をにじませた、戦後民主主義派知識人の登場と、それとの論戦。この記録に、その点は象徴されていよう。そう、私たちは〈象徴天皇制デモクラシー〉の内在的批判を課題として突きだし、個人の自己決定権を奪還する相互主体的な活動としての〈民主主義〉を〈象徴天皇制デモクラシー〉に対置して闘い続けてきたのだ。そして、戦後憲法との関係でいえば、国家(天皇)のごとく戦争(軍隊)を前提にする「平和」などではなく、9条の理念通りの〈絶対平和主義〉理念の積極性を、この点はまともな9条護憲派より、ずいぶん遅れて発見し、右翼の公然たる暴力の日常化の中で〈非暴力直接行動〉をしゃにむにつみあげてきたのである。中心にかかげ続けた政治テーマは〈天皇制の植民地支配・戦争責任・戦後責任を問い続ける〉であった。この長い長い自分たちの象徴天皇制批判の、〈運動体験〉を、次のXデー状況に抗する運動の中で、あらためてはじめてXデーを経験する世代とともに、どう〈思想化=運動化〉するか。これに自覚的であり続けたい。

(天野恵一)

【月刊ニュース】反天皇制運動Alert 0号(2016年6月 通巻382号)

第Ⅹ期反天皇制運動連絡会への呼びかけ
設立目標・運営の申し合わせ
野次馬日誌
集会の真相 ◉  5・27 講演会「心は支配されたくない」報告
学習会報告 ◉ 天野恵一「マスコミじかけの天皇制」(インパクト出版会、一九九〇年)
反天日誌
集会情報

 

*2016年6月7日発行/B5判8ページ/一部50円
*模索舎(東京・新宿)でも購入できます。

http://www.mosakusha.com/voice_of_the_staff/