【書評】『歴史は墨でぬりつぶせない:アジアの歴史と女性の人権』『〈平和の少女像〉はなぜ座り続けるのか』

二〇一五年一二月二八日、日韓外相会談が突然に発表され、日本政府と韓国政府により、「慰安婦」問題が「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」したとされた。

この政府間「合意」が、国家の犯罪に対する責任を明らかにして当事者への謝罪を行なうものではないことは、当初から明白だった。そもそも安倍らは、一貫して日本が侵略戦争をしたという事実も、性奴隷制の事実も、これに関する国家の責任も否定してきた。不十分ながらではあれ、これらへの国家関与の責任を認める方向を打ち出した河野談話や村山談話などすら否定し、「自虐史観」であると宣伝して唾を吐きかけてきたのは、日本会議をはじめとする、政界・財界・宗教や学界などのグループであり、九〇年代後半以降、安倍らはこうした勢力の代表としてふるまってきたのだ。

そしてもちろんこの政府間「合意」の後にも、安倍は国会などの場における公式の謝罪を拒み、安倍の思想を汲む議員やその周辺からは「慰安婦は職業的売春婦だ」などとして、彼女らを侮辱し「合意」が空文であることを示した。形式的に国家間の共同的な確認であるからといって「合意」なるものが重い意味を持つはずもない。また、これがそもそも米国の東アジア戦略に基づいた日韓政治の「調整」でしかなかったこともはじめから自明だった。「合意」は、むしろ「最終的かつ不可逆的に解決」したという国際的な虚偽のための「免罪符」としてこそ機能したのだ。これに対しては、国連女性差別撤廃委員会などの人権機関からも強い批判がなされている。

中原道子の「歴史は墨でぬりつぶせない:アジアの歴史と女性の人権」は、「河野談話」以降に、これを単なる政治家の認識の表明にとどまらせず、実質のあるものとさせるべく積み上げられてきた、主として民間の各団体や歴史家らによる事実の確定作業や、司法や行政に対する働きかけの努力と成果などを具体的に示している。さらに、こうした日韓における共同的な作業に対し、安倍や橋下らのような極右政治家がどのような対応をしてきたかについても、年表により時系列で振り返っている。この本は、決して大部のものではないが、「戦後七〇年」を機に、さらに進められようとした歴史修正主義に対抗する重要な橋頭保となったものでもある。

朴槿恵の失脚により、さきに触れたような日韓政府間「合意」も、その「効力」を喪失していくだろう。したがって、私たちは、この問題を本来あるべき位置に置きなおし、被害の当事者の声に寄り添う立場から考えていかなければならない。この本は、戦争犯罪がどれほど深く人間を傷つけるものであるのか、それを糺していくための作業がどれほど困難であり、また、だからこそ価値のあるものであるかということを示しており、今だからこそ、あらためて読まれるべきものだ。

韓国の芸術家キム・ソギョン、キム・ウンソンによる〈平和の少女像〉は、韓国で一九九二年からずっと続いてきた「水曜デモ」の一〇〇〇回を記念して、二〇一一年にソウル日本大使館前に建立されたことにより、その闘いのシンボルとして大きい意味を持つことになった。いま右派にとって「日韓合意」とは、この少女像を撤去させる「合意」であるとまで認識されているとも言えよう。

しかし、こうしたモニュメントが重要な「意味」を持ってきたのはなぜか。それは何よりも、日韓の政府、とりわけ日本政府が、軍隊の犯罪を隠蔽し、被害者の声を圧殺し侮蔑を浴びせ続けてきたことによるものだ。彼らは、時とともに被害者がすべてこの世を去り、告発の声が発せられなくなることのみを望んできた。
だから、いつまでもそこにあり続ける〈平和の少女像〉が、黙しながらなお問うている歴史事実に怯え、敵視するのだ。

「Fight for Justice 」のスタッフによって制作されたこの本は、国際的に設置が広がる「少女像」の意味ばかりでなく、各国に存在する「戦争記念碑」のもたらす役割をも厳しく指弾するものでもある。そして、少女像に対するさまざまな「批判」にも、反植民地主義、民族主義、女性差別など、いくつもの問題意識から反批判がなされている。〈平和の少女像〉のもたらすものが、すでに「シンボル」を超えたものとなっていることを、この本は強く感じさせてくれる。

●中原道子『歴史は墨でぬりつぶせない:アジアの歴史と女性の人権』(発行:スペース伽耶/発売:星雲社/定価: 本体1200円)
●日本軍「慰安婦」問題Web サイト制作委員会・編 岡本有佳・金富子責任編集『増補改訂版〈平和の少女像〉はなぜ座り続けるのか』(発売: 世織書房定価: 本体1000円)
http://fightforjustice.info

(蝙蝠)

【今月のAlert】ここまできた「翼賛国会」を許すまじ、そしてまずは4.29行動へ!

またしても、疾風怒濤の一ヶ月が過ぎた。深刻かつ緊急を要する課題が私たちの頭上を猛スピードで駆け巡る。沖縄への米軍基地押しつけ問題、共謀罪、原発、オリンピック、森友学園等々、具体例は出し尽くせない。そして、目をそらせばそれらは大きな波の中に埋もれてしまい、見なくてすむかのごとき錯覚を作り出す。間違いなくその大波は私たちを襲ってくるのだが。

当然、その怒濤には天皇の「退位」をめぐる問題も含まれている。ただ、その深刻さ・緊急性の高さに比し、直接的な被害・加害、あるいは社会的弊害は極端に見えづらいものとしてあり、天皇制を問題であると捉える人びとは少なく、むしろ無関心的容認派が圧倒的なマジョリティとしてある。私たちは、さまざまな課題にゆさぶられ、社会が根底から崩されつつあるいまの事態に、私たちの役回りとして、これまでどおり天皇制の問題を訴えていかねばと改めて思う。

天皇の「退位」については、一月の「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」論点整理が示した「一代限りの特例法」を下敷きに、衆参両院正副議長が「議論のとりまとめ」で各党・各会派との調整と修正を重ね、三月一七日、与野党がそれに合意、三月二二日には有識者会議の四人の専門家へのヒアリングと続いた。「とりまとめ」では大枠の形が出され、さらなる「天皇の意向」や宮内庁主導で動く事態も見えてきている。また、「退位問題」をめぐる言説が、天皇制をより差別的・権威的なものに再定義するという、お馴染みの事態も生じている。

特例法の名称は「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」。民進党をはじめ、「恒久法」を求めていた党・会派を合意させたのは、典範の付則案として出された「天皇の退位について定める『天皇の退位等に関する皇室典範特例法』は、この法律と一体をなすものである」の一文だ。報道によれば、「天皇の退位」ではなく、「『今上天皇の退位』として、今の天皇だけというニュアンスを強めたい」と主張していた安倍の妥協の結果という。これで、「一代限り」だが「将来の天皇が退位する際の先例」になるということらしい。苦し紛れの「苦心の『総意』」ということだ。

「恒久法」派で粘った民進党に「とりまとめ」合意に向かわせたカギはもう一つある。「【安定的な皇位継承】政府は女性宮家創設等を検討する」の一項目だ。
二〇一二年末の民主党政権下の「女性宮家」創設騒動は記憶に新しい。実は民進党への「配慮」による修正はほかにもある。「特例法」に、退位に至る事情の一つとして天皇の「お気持ち」を明記するというのだ。「恒久法」を主張する派は、もともと天皇の意向を忖度する政治を是とするからこその「恒久法」派なのだが、これが極右安倍政権に対する圧倒的マジョリティであることの問題は深刻この上ない。民進党の野田幹事長は「特例法」を「事実上の第二皇室典範」と喜び、翼賛国会は続く。「国民の総意」は無視。

細々としたことについても案は出そろいつつある。天皇の退位後の呼称は「太上天皇」の略称とされる「上皇」案が優勢。敬称は「陛下」。葬儀は「大喪」。墓は「陵」。補佐機関を「院宮職」(「院宮」は退位後の天皇を表す)。「品位が保たれる額」の経費確保。すべて「格下げ」にはできない、という理由だ。秋篠宮は「皇太弟」か「皇太子」案と「秋篠宮」踏襲の政府案、待遇は皇太子と同等。天皇は、退位後の公的活動を退く意向を表明。懸念されていた「二重象徴」をこれで回避するという。住居は退位後は現在の「東宮御所」で調整。新天皇は「御所」、秋篠宮は現在の「宮邸」を増改築など、宮内庁が検討しているという。憲法も法律も国家予算も、天皇の「意向」一つで簡単に変えられるという「先例」が作られ、それが新しい天皇制として認識され始めている事態となっている。

最後に「女性宮家」について少しだけ。伝統主義右派は「女性宮家」反対の理由として「女系天皇に道を開く」と言ってきたが、そのことは私たちも知っておくべきであろう。「女性宮家」に男子が産まれた場合どうするのか、さらに差別的な規定をつくって一族から排除するか、皇位継承者の一人とするのかという問題がすぐに生じるわけだ。あるいは、女性宮家に入る男(「民間人」)はいるのか?その待遇は?ウンザリする話ばかりだ。こんな制度はさっさとやめるしかあるまい。

このようななか、私たちは、4・28 -29 行動として四月二九日に集会とデモを準備中である。沖縄から知花昌一さんをお招きし、「日の丸」焼き捨てから三〇年、「沖縄にとっての天皇制と日米安保」について語っていただく。

天皇制の問題は広くて大きい。一つひとつ自分たちの課題として提示していきたい。多くのご参加を!

(桜井大子)

【表紙コラム】

いやはや国会中継をこれほど面白く観たことはなかった。森友学園の籠池理事長の国会喚問での姿は実に視聴者を楽しませてくれたと思う。視聴率が16%を超えたというのもうなずける。

「トカゲのシッポきり」にはさせないと覚悟した男のパフォーマンスには痛快さがあった。こういう言い方は西の方からつっこまれそうだが、「浪花漫才」を感じてしまい、「よしっ!ガンバレ籠池のおっさん」などと、つい思わずその場は応援したくなってしまったのである。

園児に教育勅語を暗誦させるとんでもない幼稚園があるという話は、数年前に「天皇制」「日の君」問題に関心のある周辺では話題になった。

それは安倍晋三による教育基本法の改悪がなされ、天皇を元首とした「美しい国」作りの流れのなかにある。いよいよそのようなことが容認される時代になったのねと、極右安倍政治の始まりと同時にうす気味悪さを感じたものだ。

安倍首相はじめ稲田防衛大臣、自民党の面々はこの1948 年に衆参両院で失効が決議された「教育勅語」に肯定的である。騒動の登場人物たちの顔ぶれをご覧あれ。まあ揃いも揃った歴史修正主義たちである。そもそも今回の学園問題もその彼らの思想の共鳴が発端である。

彼らが創設を望んだ「瑞穂の國記念小學院」は、今回の騒動でなくなった。しかし、この騒動の片方で、来年度から教科化される道徳の教科書検定の結果が発表され学習指導要領には、中学武道に「銃剣道」が追加された。この極右政治家たちの道徳観が公然と押し付けられるわけだ。籠池さんの奮闘もトカゲのシッポになりそうだし、それを許す世論は、道徳教科書も「銃剣道」もすんなり受け入れるのだろう。あ~土の中で冬眠していたい。♪春よこい、早くこい。
(桃色鰐)

【月刊ニュース】反天皇制運動Alert 10号(2017年4月 通巻392号)

今月のAlert ◉ここまできた「翼賛国会」を許すまじ、そしてまずは4・29 行動へ!(桜井大子)
反天ジャーナル◉つるたまさひで、宮下守、映女
状況批評◉天皇の生前退位-安倍政権のもうひとつの根拠法の無視(島川雅史)
書評◉『歴史は墨でぬりつぶせない:アジアの歴史と女性の人権』『〈平和の少女像〉はなぜ座り続けるのか』(蝙蝠)
書評◉『一からわかる共謀罪:話し合うことが罪になる』(北野誉)
太田昌国のみたび夢は夜ひらく〈83〉◉現政権支持率の「高さ」の背景に、何があるのか(太田昌国)
マスコミじかけの天皇制〈10〉◉〈3・11 災後〉六年・原発再稼働と「生前退位」:〈壊憲天皇明仁〉その8(天野恵一)
野次馬日誌
集会の真相◉ 2・25/3・3オリンピックおことわリンクIOC(International Okotowari Convention )企画/3・8 警視庁機動隊の撤退を求める住民訴訟第1回口頭弁論/3・11 原発事故隠蔽・責任放棄の3・11 「天皇・皇族出席の追悼式典」反対!核・原発を止めよう!
学習会報告◉ 天野恵一責任編集『インパクション臨時増刊 天皇Xデー状況を撃ち返せ!』(インパクト出版会、一九八八年)
反天日誌
集会情報

→前号の目次はこちら

*2017年4月4日発行/B5判16ページ/一部250円
*模索舎(東京・新宿)でも購入できます。

http://www.mosakusha.com/voice_of_the_staff/

【集会案内】沖縄にとっての天皇制と日米安保  「日の丸」焼き捨てから30年、ゾウの檻から21年

沖縄にとっての天皇制と日米安保 「日の丸」焼き捨てから30年、ゾウの檻から21年

[お 話] 知花昌一さん(沖縄読谷村僧侶)
[日 時] 4 月 29 日(土・休)13:00開場/13:30開始
[会 場] 千駄ヶ谷区民会館・集会場
*JR原宿駅、地下鉄明治神宮前駅・北参道駅
[資料代]800円
*集会後デモ(4時半出発予定)■2月の安倍・トランプ大統領会談では、「日本の首相はトランプ大統領の心をつかむ方法を教えてくれた。それは媚びへつらうことだ」(米誌タイム)と揶揄されるほど、米国追従外交が臆面もなく展開された。しかし、その一方で、靖國思想、「教育勅語」など大日本帝国型天皇制国家への信奉がますます露わとなる安倍政権。天皇制国家と対米従属という矛盾の激化。
■また、アキヒト天皇による「生前譲位」の意思表明は、天皇の行為を戦前の教訓をもとに厳しく制限した現行憲法のもとでは明確な違憲行為であるにもかかわらず、マスメディア・憲法学者等からはまともな批判がなされず、国会ではその追認(法整備)が、実質審議を避ける方向で、着々と進められつつある。これは、天皇による違憲行為への翼賛的迎合であり、国民主権・立憲主義の自壊ともいうべき危機的事態である。
■またその一方で、警察権力、司法、暴力、金権、右翼勢力までも動員した、沖縄・辺野古での米軍基地建設の強行が示す、三権分立、地方自治すら成立させない「構造的差別」政策による沖縄への基地(安保)の押しつけ。
■こうした情勢の中、今年も、4.28(沖縄デー)と4.29(「昭和の日」=天皇ヒロヒトの誕生日)を射程に、集会・デモをやります。今年の講師は知花昌一さん。1987年の沖縄国体で掲げられた「日の丸」を引きずり下ろし、1996年4月1日には、不法収用状態となった米軍基地(「ゾウの檻」)で「もあしび(宴会)」を行った知花さんをお招きして、自身の体験に即して、天皇制や日米安保の問題を語っていただきます。ぜひ、ご参加下さい。

[主催]天皇「代替わり」と安保・沖縄・「昭和の日」を考える4.29反「昭和の日」行動
【呼びかけ団体】アジア連帯講座/研究所テオリア/戦時下の現在を考える講座/立川自衛隊監視テント村/反安保実行委員会/反天皇制運動連絡会/ピープルズプラン研究所/「日の丸・君が代」の強制反対の意思表示の会/靖国・天皇制問題情報センター/連帯社/労働運動活動者評議会

【呼びかけ】天皇「代替わり」と安保・沖縄・「昭和の日」を考える  4・29行動への参加・賛同を

今年二月の安倍・トランプの日米首脳会談における共同声明では、日米同盟の強化が謳われ、「核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない。(略)米国は地域におけるプレゼンスを強化し、日本は同盟におけるより大きな役割及び責任を果たす」とされた。
米国では、「日本の首相はトランプ大統領の心をつかむ方法を教えてくれた。それは媚びへつらうことだ」(米誌タイム)、「トランプ大統領との個人的な結びつきを強めようとする安倍首相の強い決意は他の国の首脳とは対照的」(ワシントン・ポスト)などと報道された安倍は、札付きの天皇主義右翼である。
また、先の共同声明では、さらに「両首脳は、日米両国がキャンプ・シュワブ辺野古崎地区(沖縄県名護市)及びこれに隣接する水域に普天間飛行場(同県宜野湾市)の代替施設を建設する計画にコミットしていることを確認した。これは、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策である」とも盛り込まれた。
他の解決策を真剣に探ることなく、ただただ沖縄に押しつければよいという日本政府・安倍政権が振り回す「唯一の解決策」という文言がここでも使われている。
ひたすら米国に「媚びへつらう」ことと愛国(天皇制の信奉)の矛盾(天皇ヒロヒトにとっては自身の「保身」として矛盾しなかったが、安倍にとっては明らかに矛盾)。日米同盟の歪さ(在日米軍の特権的な地位での存在)を隠すための沖縄への基地のしわ寄せ・押しつけ(構造的沖縄差別による日米安保体制の維持)。
これらは、明治以降の植民地支配・侵略戦争を展開した天皇制国家の(沖縄を捨て石にしての)敗北から、米軍占領を経て(冷戦という国際政治環境のなかで)、サンフランシスコ講和条約(と同時に結ばれた日米安保条約とともに)という形での日本の主権回復(沖縄の切り捨て)によってもたらされた矛盾である。
私たちは、戦前・戦中の天皇制国家の大罪を敗戦を契機として償う(償わせる)ことができなかったうえに、さらに「誤った」戦後の歴史を積み重ねてきてしまっている。
アイヌモシリ統合と並んで近代天皇制国家の出発点をなす「琉球処分」、沖縄差別・収奪政策、「皇民化」政策から沖縄戦、米軍支配と「本土」からの切り捨て、「復帰」による再統合と安保前線基地化といった歴史は、そのまま日本による沖縄支配の歴史であり、その一貫した持続であった。
4・28=一九五二年に「誤った」戦後が始まった日。沖縄が米国に売り渡された日。4・29=その責任を負う天皇ヒロヒトの誕生日。
今年もこの両日を視野に、戦後日本の象徴天皇制国家と「構造的沖縄差別」によって維持されている「日米安保体制」を問う行動に取り組む(今年は、29日に集会とデモを予定)。
多くの人びとの参加・賛同をお願いします!

天皇「代替わり」と安保・沖縄・「昭和の日」を考える4・29行動

【呼びかけ団体】
アジア連帯講座/研究所テオリア/戦時下の現在を考える講座/立川自衛隊監視テント村/反安保実行委員会/反天皇制運動連絡会/ピープルズ・プラン研究所/「日の丸・君が代」の強制に反対する意思表示の会/靖国・天皇制問題情報センター/連帯社/労働運動活動者評議会

連絡先●東京都千代田区神田淡路町1─21─7 静和ビル2A 淡路町事務所気付
振替●00110─3─4429[ゴメンだ!共同行動]

【集会報告】天皇制はいらない!『代替わり』を問う2.11反「紀元節」行動報告

「天皇代替わり」を問う闘いを一つずつ積み上げ、
反天皇制の大衆運動をつくりあげていこう!

今年の二月十一日は、「天皇制はいらない!『代替わり』を問う 二・一一反『紀元節』行動」として、十二団体の呼びかけにより取り組まれた。
まず、日本キリスト教会館から出発したデモ行動は、早稲田通りを高田馬場駅前まで進み、左折して諏訪通りから明治通りに出て、また早稲田通りから集会場の日本キリスト教会館に戻っていくというコース。十一月二〇日の吉祥寺における反天皇制行動を圧殺しようとした右翼の攻撃と警察の警備を撃ち返そうと、一〇〇名を超える人々が結集してくれた。右翼の妨害はやはりあったが、今回は散発的であり、警察の警備体制がかなり広範囲にデモ行動を取り巻いていたため、右翼による攻撃よりも警察の規制が厳しかったが、旗や横断幕、トラメガを奪われたりすることなく、力強い反「紀元節」・反天皇制の声を上げることができた。
今回の2・11集会は、開始された「天皇代替わり」状況の中で、これらとどのように闘っていくのかについて、現場の活動家の声を中心に、問題提起とシンポジウムを行なっていくという内容で行なわれた。
まず、実行委から、集会基調(別掲)をベースにしながら、天皇代替わり以降の全体情勢の小括を行なった。その中で強調されたのは、天皇制をめぐる憲法論も歴史的に再論議しなければならないのに、それが等閑視されてしまっていることだ。憲法改悪の問題が重大化している中だからこそ、あらためてこれまでの議論を前提に、反天皇制の立場をより打ち出していかねばならない。
続いて、井上森さん(立川自衛隊監視テント村)から、吉祥寺での「11・20 天皇制いらないデモ」への右翼の襲撃と警察の弾圧の経験をもとに、今後の反天皇制の闘いへの問題提起がなされた。圧倒的な暴力にひとたびは潰されたが、逆に、暴力と弾圧をきっかけに、「平成」天皇制のじっさいの姿が露わに浮かび上がったのだ。反撃への意志が多くの人々との深いつながりとともに形になろうとしており、その態勢こそをこれからの闘いの核にしていきたい、そのための活発な議論を呼びかけたいというものだ。
京極紀子さん(「ひのきみ」法制化と強制に反対する神奈川の会)からは、八九年の代替わり過程への神奈川での取り組みの貴重な資料や報道とともに、当時の状況や問題意識を丁寧に紹介。当時と今とでは、天皇制などに対する批判意識も批判層もあまりに縮小してしまってはいるが、そのときの問題意識を現在につなげながら、新たな「天皇のいない社会」を選択する活動をつくりだしたいと報告。
酒田芳人さん(安倍靖国参拝違憲訴訟弁護団)からは、この靖国訴訟がこれまでに問うてきた、政教分離や信教の自由、平和的生存権をはじめとする重要な内容をあらためて提起。判決日も四月二八日と決定し判決の内容も決して期待はできないが、数々の感動的な原告証言がなされ、大きな意味を持つ裁判となっている。発言では、法曹関係者としてはオフレコの発言も交えながら、今後への決意が表明された。
桜井大子さん(女性と天皇制研究会)からは、天皇制の継承が焦点化される中で、あらためて強調されてきた「家父長制」「男系主義」イデオロギーの問題を提起。代替わり過程で自明視されている「伝統」が、どれほど異様なものであるかを問いながら、「家族国家」観を国家の支配と重ねる、自民党改正憲法草案二四条の批判がなされた。
藤岡正雄さん(はんてんの会・兵庫)からは、明仁のメッセージに対する批判論を一つひとつ紹介しながら、これまでの天皇制に対する関西での反対活動について語った。九五年の阪神淡路大震災への訪問をはじめとする天皇の動きが、多くの人権侵害を生みだしてきた。こうした事実への批判を突き出しながら、労働者や市民の運動をいまこそ深いところから作っていきたいとの発言がなされた。
会場からは、さらに憲法論や共謀罪の問題についての提起があり、これらの発言を受けてディスカッションに。裕仁の重病の発覚から「自粛」強要、そしてその死の経過で展開された「天皇代替わり」と比べると、より翼賛の色の強い今回の「代替わり」過程だが、これまでの議論や闘いの経過をふまえながら、天皇制や安倍政治を撃っていく全国的な行動が必要とされている。多くの論点が出されたが、これらは今後もさらに積み上げていきたい。
最後に、つくばの「戦時下の現在を考える講座」や、キリスト者らにより一九六七年からずっと持続されている「なくせ!建国記念の日・許すな!靖国国営化 2・11東京集会実行委」との連帯アピールを交換し、今回の2・11反『紀元節』行動を締めくくっていった。

(蝙蝠)

*共同行動報告集(2017年3月16日発行)より

【学習会報告】横田耕一『憲法と天皇制』(岩波新書、一九九〇年) 

戦後の象徴天皇制の問題を憲法との関係から新書一冊にまとめた本で、学習会テキストやレジュメの元ネタとして活用していた人が今回続出したが確かによくまとまっている。刊行は九〇年、前回代替わりの真っ只中なのでこの本であつかわれているのはヒロヒトの象徴天皇制だが、基本的な問題は当然出そろっている。

三章「天皇の権威強化を支えるもの」が最もページ数も多く、中心と言っていいと思われる。日の丸・君が代、元号、各種公的行為、天皇には裁判権が及ばないと述べる裁判所、と具体的に列挙されている。また五章「象徴天皇制と人権」は天皇制がいかに人権を侵害しているかについて、具体的な運動への弾圧をもとに述べている。一般の読者なら天皇制の持つ抑圧的で暴力的な側面を初めて知り、驚くかもしれない。

しかしそれらよりも僕が気になり、今回議論にもなったのは別のことである。例えば四章「代替わり儀式と象徴天皇制」は代替わり儀式について具体的に実態を見て「憲法的評価」を下す章である。個別に儀式が検討されほぼすべてに「違憲の疑いが濃い」と判断されている。もちろんそうした丁寧な検討は必要である。
同時代に進行中なら尚更にそうだ。だが、あの時憲法学者だけでなくマスコミさえ違憲の疑いが強いと言う中、儀式は行われ続けた。憲法制度として天皇制を論じるに際し「条文をこう解釈するべきである」と憲法学者たちが判断し学会の多数派となっても、現実の政治の中では学者たちが支持しない解釈こそが行われている。実態と解釈がここまで乖離している中、現実には反映されない解釈の正しさを述べながら、憲法学者はどのような思いを抱いているのだろうか? 誠実な憲法学者の限界を本書に見てしまうのは僕だけだろうか。

次回は三月二一日(火)。 テキストはインパクション臨時増刊『天皇Xデー狀況を撃ち返せ!』

(加藤匡通)

【集会報告】天皇はいらない!「代替わり」を問う反「紀元節」行動

二月一一日、日本キリスト教会館で約一〇〇人が参加して標記行動を「実行委」主催で行った。今回は、各地でそれと闘っている人たちと意見交換し、「代替わり」過程総体と対決する共同の行動をつくり出すための集会にしたいとデモ後の集会とした。

昨年の吉祥寺のデモに象徴されるように右翼によるデモへの暴力的破壊が心配されたが、例年に比しても右翼が少なく、警察のデモ規制の酷さが目立ったが最後までシュプレヒコールが途切れない行動だった。

デモ後にも関わらず、会場いっぱいの参加者で集会を行った。実行委から天皇「代替わり」状況をどうとらえるか。憲法論議として天皇問題を論じるべきではないかなど問題提起を行った。続いて井上森さん(立川自衛隊監視テント村)は、11 ・20 の吉祥寺デモで実感したのは私たちの権利なんてほとんどないみじめな状態でこれが現在である。ここに反天皇制の共同性を打ち立てていきたいと訴えた。京極紀子さん(「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会)は、ヒロヒトXデー時と現在の闘いについて報告、酒田芳人さん(安倍靖国参拝違憲訴訟弁護団)は、靖国訴訟の歴史と今後が話され、桜井大子さん(女性と天皇制研究会)は、天皇メッセージに現れた家父長制・血統主義家制度の強化、藤岡正雄さん(はんてんの会・兵庫)は、これまで国体や阪神淡路大震災の被災地訪問など天皇の公的行事に対する闘争を行ってきた。憲法破壊しているのが天皇であり、天皇制廃絶の運動を共につくっていこうなどの多岐にわたる話があった。討論の後、「戦時下の現在を考える講座」とキリスト者の2・11 行動からの連帯メッセージと、「3 ・11 行動」から行動への呼びかけが行われた。時間が足りず、充分な討論が出来なかったが、今年の「生前退位」特別法、その後の「即位・大嘗祭」など天皇「代替わり」に反対する運動につながる集会になった。

(野村洋子)

【傍聴報告】安倍靖国参拝違憲訴訟結審

実は、反天連メンバーの多くも原告として参加している、安倍靖国参拝違憲訴訟(東京)。二〇一四年の提訴以来、これまで一一回にわたって口頭弁論を重ねてきたが、二月六日、最終弁論が開かれて結審した。

最終弁論は、まず原告五人の意見陳述から。吉田哲四郎(神奈川平和遺族会)、渡辺信夫(元牧師)、岡田良子(平和運動活動家)、佐野通夫(教育学研究者)、北村小夜(元教員)さんから、それぞれの立場で、自己の体験をふまえた思いのこもった訴えがなされた。続いて弁護団から最終準備書面の陳述。被告側(国・靖国神社・安倍)のぺらぺらな書面に対して、原告側で準備した最終書面は二五四頁という大作である。もちろん全文を読むことはできないので、三人の弁護士が要旨を陳述した。最後に木村庸五弁護団長が、「本件のような、政治部門による明らかな違憲行為を、司法がくい止めることができないならば、権力の暴走を制止することができなくなり、立憲民主制は破壊されることになります。原告らの本件請求を認容することによって、立憲民主制下において基本的人権擁護という最も重要な役割を与えられた裁判所が勇気をもって判決をされることを切に願いつつ本弁論を締めくくります」と述べて終了した。

東京地裁での判決言い渡しは四月二八日(金)一六時三〇分からだ。そのあと、後楽園近くの文京区民センターで報告集会も予定されている(一九時から)。靖国訴訟は関西が先行し、すでに控訴審を闘っていたが、この二月二八日には大阪高裁の判決が出た。一審判決もひどかったが、憲法判断を避けたばかりでなく、その必要もないと言い切った「糞判決」(某弁護士)。東京の訴訟も、これまでの道理を尽くした原告・弁護団の訴えで、「勝訴判決を書くための十分な材料を裁判所に提供した」(弁護団長)といえるが、この政治状況は決して楽観を許さない。ぜひ傍聴と注目を!

(北野誉)